09:15 〜 09:30
[PPS10-08] X線回折バルク分析法によるCO3コンドライトの鉱物学と熱史解析
キーワード:CO3コンドライト、鉱物学、熱史、X線回折、アモルファス珪酸塩
はじめに
石質隕石のX線回折データはそのキャラクタリゼーションに有効である。通常行われる光学顕微鏡による組織観察とEPMAによる主要鉱物組成によるキャラクタリゼーションとは独立である。比較的容易に、整合的な結果を得るだけでなく、さらに定量的な結果を得ることができる。この手法を用いてCO3コンドライトの鉱物学的研究と熱史解析を行った。
実験
使用したX線回折装置はリガク製のSmartLabで、1cm幅の長手制限スリットを使用し、研磨薄片を100rpmで面内回転してその全域にX線をあてて、粉末X線回折パターンを取得した。CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)を用いた。CO3コンドライトは 10試料の研磨薄片で、隕石名とサブタイプは、それぞれ、ALH77307 3.03, Y81020 3.05, Colony 3.0, A881632 3.1, Y791717 3.3, Y983589 3.4, Lance 3.5, A882094 3.5, ALH77003 3.6, and Isna 3.8である。
結果と議論
かんらん石(130)のピークはサブタイプが3.8では単一ピークであるが、3.6以下ではピークが2つにスプリットする。これは、低角側がマトリックスを構成する鉄に富むかんらん石で、高角側がコンドリュール(主としてI型)のフォルステライト端成分に近いかんらん石に由来する。それらの半値幅とサブタイプとの間に明瞭な相関が認められる。さらに、これらのスプリットした積分強度比のサブタイプとの相関を見ると、CO3.0のみが相関からはずれてMg/Feが高い。これはCO3.0のマトリックスにアモルファス相が多いという報告(Howard et al., 2014; Bonato et al., 2016)と整合する。こうした系統的な差異は母天体内部の温度史を反映している。かんらん石中のMg-Fe元素拡散律速によりフォルステライト的なかんらん石の粒子(平均粒子直径50µm)の縁(厚みd)が鉄に富むかんらん石に変化すると考えることができる。したがって厚みdは、かんらん石のFe-Mgの平均拡散距離を意味する。スプリットした積分強度比(IMg/IFe)は、幾何学的モデル解析により体積比(VMg/VFe)と関連づけできる。この結果、強度比からdが求まる。単斜エンスタタイトのMg-Fe拡散は起きない条件も考慮すると、母天体の最高到達温度は620-900Kと求まる。この結果は、Schwinger et al. (2016)と整合的である。さらに、この解析手法からCO3.0のアモルファス相のモードは11-22%と求まる。
文献
Bonato E. et al. 2016. 79th Ann. Meeting. Met. Soc. #6466.
Howard K. T. et al. 2014. 45th LPSC #1830.
Schwinger S. et al. 2016. GCA, 191, 255.
石質隕石のX線回折データはそのキャラクタリゼーションに有効である。通常行われる光学顕微鏡による組織観察とEPMAによる主要鉱物組成によるキャラクタリゼーションとは独立である。比較的容易に、整合的な結果を得るだけでなく、さらに定量的な結果を得ることができる。この手法を用いてCO3コンドライトの鉱物学的研究と熱史解析を行った。
実験
使用したX線回折装置はリガク製のSmartLabで、1cm幅の長手制限スリットを使用し、研磨薄片を100rpmで面内回転してその全域にX線をあてて、粉末X線回折パターンを取得した。CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)を用いた。CO3コンドライトは 10試料の研磨薄片で、隕石名とサブタイプは、それぞれ、ALH77307 3.03, Y81020 3.05, Colony 3.0, A881632 3.1, Y791717 3.3, Y983589 3.4, Lance 3.5, A882094 3.5, ALH77003 3.6, and Isna 3.8である。
結果と議論
かんらん石(130)のピークはサブタイプが3.8では単一ピークであるが、3.6以下ではピークが2つにスプリットする。これは、低角側がマトリックスを構成する鉄に富むかんらん石で、高角側がコンドリュール(主としてI型)のフォルステライト端成分に近いかんらん石に由来する。それらの半値幅とサブタイプとの間に明瞭な相関が認められる。さらに、これらのスプリットした積分強度比のサブタイプとの相関を見ると、CO3.0のみが相関からはずれてMg/Feが高い。これはCO3.0のマトリックスにアモルファス相が多いという報告(Howard et al., 2014; Bonato et al., 2016)と整合する。こうした系統的な差異は母天体内部の温度史を反映している。かんらん石中のMg-Fe元素拡散律速によりフォルステライト的なかんらん石の粒子(平均粒子直径50µm)の縁(厚みd)が鉄に富むかんらん石に変化すると考えることができる。したがって厚みdは、かんらん石のFe-Mgの平均拡散距離を意味する。スプリットした積分強度比(IMg/IFe)は、幾何学的モデル解析により体積比(VMg/VFe)と関連づけできる。この結果、強度比からdが求まる。単斜エンスタタイトのMg-Fe拡散は起きない条件も考慮すると、母天体の最高到達温度は620-900Kと求まる。この結果は、Schwinger et al. (2016)と整合的である。さらに、この解析手法からCO3.0のアモルファス相のモードは11-22%と求まる。
文献
Bonato E. et al. 2016. 79th Ann. Meeting. Met. Soc. #6466.
Howard K. T. et al. 2014. 45th LPSC #1830.
Schwinger S. et al. 2016. GCA, 191, 255.