09:45 〜 10:00
[PPS10-10] マイクロX線CT・FIBシリアルセクショニングを用いたIvuna隕石のマトリクスの3次元構造観察
キーワード:CIコンドライト、水質変成
CIコンドライトは、バルク組成が揮発性元素を除いて太陽大気の化学組成と類似し、太陽系で最も始原的な隕石であり [1]、非常に強い水質変成を受けている。マトリクスは層状珪酸塩により構成され、マグネタイト、硫化物、炭酸塩や硫酸塩などの鉱物粒子を含んでいる。層状珪酸塩には、サーペンティンとサポナイトからなる粗粒なものと、サーペンティン、サポナイトとフェリハイドライトからなる細粒なものがある[2]。また、CIコンドライトは異なる岩相をもつ岩片が集積したものである。Ivuna隕石のSEMを用いた研究により、構成鉱物に基づいて4種類の岩相が認識されている[3]。一方、複数のCIコンドライトについて、SEMとTOF-SIMSによりマトリクスの組織と化学組成に基づいて8種類の岩相に分類され、それらの集積・水質変成モデルが提案されている[4]。それぞれの岩相は微細で複雑な組織を有しており、その詳細な3次元構造を明らかにすることにより、従来の2次元観察ではわからなかった情報(例えば空隙など)を得、水質変成前の状態を推定し、また水質変成プロセスの詳細(例えば、流体の移動方向など)を理解できることが期待される。このため、本研究では、X線CTとFIB(集束イオンビーム)シリアルセクショニングを用いて、Ivuna隕石のマトリクスの高分解能3次元構造観察を行った。
本研究ではまず、FE-SEM/EDX (JEOL JSM7001F/Oxford Instruments X-MaxN 150mm2)を用いて、Ivuna隕石の複数の岩片についてそのマトリクス・鉱物粒子の詳細な組織観察と元素分析・マッピングを行った。その結果に基づいて、そのうちの一つの岩片からFIB(FEI Helios NanoLab G3)により箱型のサンプル(~25 µm)を切り出し、大型放射光施設SPring-8のBL47XUにおいてSIXM (Scanning Imaging X-ray Microscopy)[5]を用いてX線CT撮影を行い、約100 nm/画素でその3次元構造を得た。次にこのサンプルに対してFIBによるシリアルセクショニングとFE-SEM観察(FEI Helios NanoLab G3)を行うことにより、サンプルの一部の領域についてより高分解能での連続的なBSE像を間隔40 nmで得た。これらの3次元CT像とSEM像から画像解析を行い、マトリクスの構成物や鉱物粒子の形状を抽出した。
薄片のSEM観察・EDX分析により、この岩片のマトリクスはMgに富み、主として粗粒で伸長した層状珪酸塩(幅約50 nm、長さ約500 nm)からなることが分かった。また、マグネタイト、ピロータイト、Niを含む硫酸塩鉱物粒子を含むが、炭酸塩鉱物は見られない。これらの特徴は、先行研究[3]の岩相Ⅱ(炭酸塩をほとんど含まず硫酸塩が支配的)に、先行研究[4]の岩相CGA(Coarse-grained phyllosilicate aggregate)に対応している。また、マトリクスは、Mgに富む層状珪酸塩をFeに富む層状珪酸塩が取り囲む2次元的には球状にみえる数µmの物体(以降PC: phyllosilicate compositeと呼ぶ)からなることわかった。
CT像には、PCだけでなく、マグネタイトの棒状結晶(約1×5 µm)や不定形や六角平板状をした空隙が見出された。六角平板状の空隙(約3×1 µm)は、その外形からピロータイトあるいは炭酸塩が溶脱した抜け殻結晶であるものと考えられる。シリアルセクショニングによるSEM像では、PCやマグネタイトが明瞭に認識できるが、空隙にはスパッタされた物質が再堆積しておりSEM像のみでは空隙とは認識できない。PCは連続SEM像によって抽出可能で、その3次元形状は不規則な楕円体である。PCやマグネタイト結晶の伸長方向はランダムであり、水質変成時に顕著な流体の移動はなかったものと考えられる。また、サブミクロンの微細な鉱物あるいは非晶質珪酸塩の集合体が強い水質変成作用を受けて、PC集合体としてのマトリクス組織が形成されたのかもしれない。
[1] Anders and Grevesse (1989) GCA, 53: 197-214. [2] Tomeoka and Buseck (1988) GCA, 52: 1627-1640. [3] Endreβ and Bischoff (1993) MAPS, 28: 345 (abstr.). [4] Morlok et al. (2006) GCA, 70: 5371-5394. [5] Takeuchi et al. (2013) J. Synchrotron Rad., 20: 793–800.
本研究ではまず、FE-SEM/EDX (JEOL JSM7001F/Oxford Instruments X-MaxN 150mm2)を用いて、Ivuna隕石の複数の岩片についてそのマトリクス・鉱物粒子の詳細な組織観察と元素分析・マッピングを行った。その結果に基づいて、そのうちの一つの岩片からFIB(FEI Helios NanoLab G3)により箱型のサンプル(~25 µm)を切り出し、大型放射光施設SPring-8のBL47XUにおいてSIXM (Scanning Imaging X-ray Microscopy)[5]を用いてX線CT撮影を行い、約100 nm/画素でその3次元構造を得た。次にこのサンプルに対してFIBによるシリアルセクショニングとFE-SEM観察(FEI Helios NanoLab G3)を行うことにより、サンプルの一部の領域についてより高分解能での連続的なBSE像を間隔40 nmで得た。これらの3次元CT像とSEM像から画像解析を行い、マトリクスの構成物や鉱物粒子の形状を抽出した。
薄片のSEM観察・EDX分析により、この岩片のマトリクスはMgに富み、主として粗粒で伸長した層状珪酸塩(幅約50 nm、長さ約500 nm)からなることが分かった。また、マグネタイト、ピロータイト、Niを含む硫酸塩鉱物粒子を含むが、炭酸塩鉱物は見られない。これらの特徴は、先行研究[3]の岩相Ⅱ(炭酸塩をほとんど含まず硫酸塩が支配的)に、先行研究[4]の岩相CGA(Coarse-grained phyllosilicate aggregate)に対応している。また、マトリクスは、Mgに富む層状珪酸塩をFeに富む層状珪酸塩が取り囲む2次元的には球状にみえる数µmの物体(以降PC: phyllosilicate compositeと呼ぶ)からなることわかった。
CT像には、PCだけでなく、マグネタイトの棒状結晶(約1×5 µm)や不定形や六角平板状をした空隙が見出された。六角平板状の空隙(約3×1 µm)は、その外形からピロータイトあるいは炭酸塩が溶脱した抜け殻結晶であるものと考えられる。シリアルセクショニングによるSEM像では、PCやマグネタイトが明瞭に認識できるが、空隙にはスパッタされた物質が再堆積しておりSEM像のみでは空隙とは認識できない。PCは連続SEM像によって抽出可能で、その3次元形状は不規則な楕円体である。PCやマグネタイト結晶の伸長方向はランダムであり、水質変成時に顕著な流体の移動はなかったものと考えられる。また、サブミクロンの微細な鉱物あるいは非晶質珪酸塩の集合体が強い水質変成作用を受けて、PC集合体としてのマトリクス組織が形成されたのかもしれない。
[1] Anders and Grevesse (1989) GCA, 53: 197-214. [2] Tomeoka and Buseck (1988) GCA, 52: 1627-1640. [3] Endreβ and Bischoff (1993) MAPS, 28: 345 (abstr.). [4] Morlok et al. (2006) GCA, 70: 5371-5394. [5] Takeuchi et al. (2013) J. Synchrotron Rad., 20: 793–800.