JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] [EE] 変動帯ダイナミクス

2017年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Robert Holdsworth(Durham University)、Jeanne Hardebeck(USGS)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、座長:竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、座長:奥平 敬元(大阪市立大学大学院理学研究科地球学教室)

11:15 〜 11:30

[SCG62-08] 山陰ひずみ集中帯に発達する断層岩と応力場:2000年鳥取県西部地震余震域の例

*内田 嗣人1向吉 秀樹1小林 健太2廣野 哲朗3 (1.島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域、2.新潟大学理学部地質科学科、3.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)

キーワード:fault rocks, The 2000 Western Tottori earthquake, Paleostress analysis

山陰地方は,沈み込み帯からの距離が比較的遠いこともあり,ひずみ速度が日本列島の中では小さいと考えられてきたが,現在では観測データの蓄積と詳細な解析により,実はひずみ速度が大きく,地震帯と重なる帯状の領域が存在することが示唆されている(例えば,西村,2014).それは「山陰ひずみ集中帯」と呼ばれ,規模の大きな内陸地震(1943年鳥取地震,2000年鳥取県西部地震,2016年鳥取県中部地震)を頻繁に発生させている.ひずみ集中帯内部の詳細な地殻変動解明にアプローチするために,「地殻ダイナミクス」プロジェクトがGNSS観測網を充実させているが,一方で地質調査より,ひずみ集中帯に分布する断層系の性状やひずみ集中帯の過去の応力場を把握し,対比させることも重要な課題の一つである.
昨年の連合大会において,向吉ほか(2016)は2000年鳥取県西部地震余震域内に発達する断層の分布が余震分布と調和的であることを明らかにし,地質時代に形成された断層が2000年鳥取県西部地震の起震断層の幾何学形態と何らかの関わりがあると述べた.また,内田ほか(2016)は,2000年鳥取県西部地震余震域内の断層が互いに切断関係にあることに注目し,断層のセグメント化が地質時代において繰り返した結果,複雑な断層系をしていることを明らかにした.
本研究では,Hough変換に基づく応力逆解析法(Yamaji et al.,2006; Sato and Yamaji, 2006)を用いて,余震域内の花崗岩に観察される地質時代の断層を形成させた応力場を推定した.まず断層の性状に基づく分類として,断層ガウジ及びカタクレーサイトを挟む断層についてそれぞれ応力場を推定した.その結果,断層ガウジを挟む断層からは2つの横ずれ断層型の応力場が検出された. E-W方向のσ1軸,N-S方向のσ3軸を持つ応力場と,N-S方向のσ1軸,E-W方向のσ3軸を持つ応力場である.このうち前者は測地学的手法に基づく現在の西南日本の広域応力場と概ね一致する.一方,カタクレーサイトを挟む断層からはN-S方向のσ1軸を持つ逆断層型応力場,E-W方向のσ1軸を持つ逆断層型応力場,E-W方向のσ3軸を持つ正断層型応力場の3つが検出された.
これら全く異なる応力場に関して,余震域内の断層系は過去の地震発生帯では正断層~逆断層型応力場を経験しており,封圧が小さい断層ガウジ形成条件下では2つの横ずれ断層型応力場であった可能性がある.
本研究により検出された応力場は正確な時間変化の把握が困難であるのが課題である.それを補うため,花崗岩体を覆う中新統相当の堆積層から断層スリップデータを採取し,本発表で花崗岩体中の応力場との比較検討を行いたい.