JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] [EE] 変動帯ダイナミクス

2017年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Robert Holdsworth(Durham University)、Jeanne Hardebeck(USGS)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、座長:竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、座長:奥平 敬元(大阪市立大学大学院理学研究科地球学教室)

11:30 〜 11:45

[SCG62-09] 岩石ー水反応に伴う反応誘起応力・歪の支配要因とそのモデル化: CaSO4–H2O系における実験的研究

*宇野 正起1岡本 敦1土屋 範芳1 (1.東北大学大学院環境科学研究科)

キーワード:Reaction induced stress, Reaction induced strain, Hydration reaction, Fluid, Serpentinization, Gypsum

沈み込み帯の水循環は脱水・吸水反応によりコントロールされ,そこから放出・吸収される水は沈み込み帯のダイナミクスに大きな影響を与える.特に吸水反応は固相の大きな体積変化を伴うため,反応のギブス自由エネルギー変化に伴い大きな応力を発生しうる.その圧力変化は熱力学的に見積もることができ,例えば蛇紋岩化反応では最大~1 GPaにもなる.このように反応誘起応力は岩石の破壊強度を超えうるため,その挙動は反応に伴う流体流路形成や,反応の空間的広がり,変形の理解に重要である.しかしながら,吸水反応による体積増加が破壊を引き起こして流体流れを増加させ,さらなる吸水反応を促進するのか,あるいは,空隙を埋めて流体流れを減少させ,吸水反応を抑制するのか,実際の岩石の力学的応答は制約されていない.本研究では,反応による体積に変化に対する多結晶体の力学的応答様式を明らかにするために,蛇紋岩化反応と同じく水との反応で大きな体積変化(~+46%)のあるCaSO4–H2O系で,吸水反応による反応誘起応力・反応誘起歪を測定した.
これまでのCaSO4–H2O系での反応誘起応力・歪の直接測定から,吸水反応に対する系の力学応答は反応速度と変形速度の競合により支配されていることが示唆されている.さらなるプロセスの制約のために本実験では,反応速度・空隙率・変形速度の時系列変化を測定した.その結果,静水圧条件下では,変形(膨張)速度は常に反応速度に比例すること,反応速度は反応表面積に律速され,ある臨界空隙率から急激に減少することが明らかになった.また,反応表面積の減少後,膨張速度は時間とともに振動しており,反応誘起割れによる透水率・有効反応表面積の変動が示唆される.一方,差応力下での変形は,静水圧下での膨張と,溶解沈殿クリープで予測される収縮の和で説明されることが明らかになった.
本実験系で観測された反応誘起歪み[ε] は,以下のパラメーターでモデル化することができる:表面反応速度定数[ks], 反応による固相のモル体積変化[ΔVs], 粒径分布[f(d)], 初期空隙率[Φ0], 臨界空隙率[Φc], 初期反応表面積[A0], 反応表面積減少係数[a].
本発表では,観測された反応誘起歪を定量的に説明するモデルを提示すると共に,その律速過程・流体分布への影響について議論する.