JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] [EE] 変動帯ダイナミクス

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Robert Holdsworth(Durham University)、Jeanne Hardebeck(USGS)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、座長:岩田 貴樹(常磐大学)、座長:Meneses Angela(Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University)

14:45 〜 15:00

[SCG62-26] 2011年東北沖地震後の流体圧変化で誘発されたと推定される山形-福島県境群発地震活動の震源移動の詳細

★招待講演

*吉田 圭佑1長谷川 昭1 (1.東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)

キーワード:frictional strength, pore pressure, hypocenter migration, swarm, 2011 Tohoku-Oki earthquake

地下への注水により、地震活動が誘発されることが知られている (e.g., Shapiro, 2008)。注水により上昇した間隙流体圧で断層の摩擦強度が低下し、摩擦すべりの条件が満たされた結果、誘発されると考えられる。同様に、自然地震の場合も、深部から上昇してきた流体による断層強度の低下がその発生要因になり得る。その顕著な例の一つに、2011年東北沖地震後、山形-福島県境で誘発された群発地震活動がある (吉田・他,2012; Terakawa et al., 2013; Okada et al., 2015; Yoshida et al., 2016)。
この群発地震活動は、2011年東北沖地震時にせん断応力が減少したにも拘わらず、その7日後に急激に活発化した。震源が migrationする特徴を持つことや、発生場所が大峠カルデラの直下であることから、流体に起因した強度低下により活動が活発化したと推定されてきた。さらに、この群発地震活動では、応力降下量、b値 (吉田・他,2016, SSJ)、摩擦強度 (Yoshida et al., 2016)が、顕著に時間変化することが知られている。本研究では、この群発活動において、震源移動や地震発生数、b値、応力降下量、摩擦強度の時間変化を生じさせている背後のメカニズムについて知見を得る目的で、震源の時空間発展をより詳細に調べることにした。
最初に、気象庁一元化カタログに記載されている最初の地震より前の期間に発生した地震のdetectionを行った。近傍の観測点の連続波形記録にSTA/LTA法 (Ross & Ben-Zion, 2014)を適用することにより、2011/3/18にS-P時間が 3秒以内の地震を748個検知することに成功した。そのうち4点以上の観測点でP, S波の到達時刻を読み取ることが可能であった地震20個を、一元化カタログのデータセットに加えて、計28,010個の地震を震源再決定の対象とした。
次に、震央間距離 1 km以内の地震同士で相互相関関数を計算し、その最大値と対応する時間差を求めた。得られた波形相関による時間差データを、一元化震源記載のP, S波到達時刻データに加えて、DD法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002)を適用することにより、震源の再決定を行った。波形相関により得られた走時差の残差は 160msecから20 msecまで減少した。
その結果、震源は、cloud状にばらついた分布から、複数枚の面状構造へと著しく変化した。地震波形の相似性を利用して相似地震群の分類をすると、分類された異なる相似地震群は、それぞれ異なるクラスター・面に集中するようになった。面の方向は、それを構成する地震のメカニズム解の一つの節面と一致しており、地震がこれらの面に沿う断層運動で生じていることを示す。震源の migrationも面に沿って進行しており、ほとんどは深部から浅部に向かって移動している。移動速度は概ね流体拡散により説明できそうであるが、M2-3程度の比較的大きな地震が発生した際には、急激な移動が生じる。
本研究でdetectした最初期の地震は、気象庁一元化カタログに記載されている地震活動の空白域に分布しており、カルデラ壁の北西部に沿っているように見える。その後、震源域が東西に広がり、 50日ほどの間、震源域最深部の水平に近い層の中で非常に活発な活動が起こっている。この時期の非常に活発な地震活動は、間隙水圧が極端に高い状態にあったことに起因する可能性がある。この期間は、応力降下量と摩擦強度が顕著に小さく、b値が大きい時期に対応する。また、震源再決定によりsharpに求まったそれぞれの面に沿う地震活動に注目すると、面上の同じ箇所が数度に渡って地震を生じさせているようにみえる。背後にaseismic slip が存在する可能性を示唆する。