JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] [EE] 変動帯ダイナミクス

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、Robert Holdsworth(Durham University)、Jeanne Hardebeck(USGS)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)

[SCG62-P05] Toyama Trough Shear Zone of Japan Sea and active tectonics along Japan margin of Amur Plate

*竹内 章1 (1.富山大学理学部)

キーワード:Japan Sea, neotectonics, Toyama Trough, tectonic inversion, Amur Plate

わが国では,1995年兵庫県南部地震以降,日本海側と内陸のひずみ集中帯において地殻地震が発生する状況が続いており,加えて2011年東北地方太平洋沖地震の発生を受け,海溝型巨大地震と島弧内帯の活断層型地震との密接な関連性が議論されている。また,国の海洋基本計画に基づく海洋資源開発や海陸両域を統合した地殻構造探査,地震・測地観測などが稠密に実施され,データが集積されてきた。

こうした背景を踏まえて,日本海盆南東部・大和海盆東部・富山トラフを含む日本海東縁海域における資源探査ならびに地震津波調査の資料をコンパイルし,主として鮮新世以降の中央日本北部のネオテクトニクス,とくに富山トラフから北部フォッサマグナ地域にかけての東西日本島弧系の境界域および日本海東縁変動帯の挙動を断層活動史解読の観点から総括した。その結果,当該海域の断層ブロック構造が明らかになり,日本海盆および大和海盆の東縁部に南北方向の大規模な剪断帯をもつ2段階の背弧拡大過程を裏付ける知見が得られた。それにもとづき断層活動史を編み,日本海東縁変動帯の仮説を検証する作業により,つぎの2点が解明された。

a)活断層および現在は活動を停止している断層を含む地体構造が明らかになった。とくに,富山トラフを構成する断層群のうち,南北走向の断層群(右ずれ剪断帯)が大和海盆東縁まで追跡された。
b)大和海盆拡大の第2時階末葉(17 Ma頃)とされる西南日本の時計回転の際には,富山トラフの南北剪断帯で左ずれをともなう開口変位があった。

本州弧の構造発達史を踏まえた地殻変動帯の形成過程については,日本海拡大のメカニズムおよび現在のプレート境界の位置との関連において,つぎのように結論される。

1)日本海での拡大から短縮への地殻変動モードの移行は,中部日本のネオテクトニクスにおいても画期的転換であった。この転換は本州の東西で発生時期に差異がみられ,フィリピン海プレートの沈み込みの影響下で起きた西南日本弧側の東西系褶曲は、能登半島では後期中新世に生じた。 東北日本弧側では,富山トラフ南部と信越堆積盆を特徴付けるNE-SW系断層褶曲構造が顕著になったのは、かなり遅れて4Ma以降であった。これはアムールプレートの東進開始が契機とみられる。

2) 対象地域の断層分布については,富山トラフ剪断帯を境にアムール・オホーツク間のプレート境界に沿った相対運動の様相,すなわち本州中部での島弧-島弧衝突を「する側」と「される側」の変動として解釈できる。衝突される側の日本海盆の東縁を含む東北日本弧内帯は全域で「正反転」が卓越する。衝突する側では、後期白亜紀に活動した断層をもつ西南日本弧の内陸で「転換」が、また背弧堆積盆で「反反転」がみられる。なお、大和トラフでは拡大に関与した断層の再活動が認められない。

3)現在の本州では,新潟―神戸ひずみ集中帯が西南日本弧の内陸部から東北日本弧日本海側にわたって観測され,糸魚川―静岡構造線と交差する。これを定常的に沈み込む太平洋プレートの上盤で生じた東北日本弧と西南日本弧の衝突・合体(あるいはDiffuse zoneの拡大,本州弧の復活)を象徴する現象とみれば,この構造帯の発現は第四紀中期にさかのぼる。