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[SCG63-03] 古第三紀における伊豆・小笠原・マリアナ弧の火山活動の変遷:メルト包有物の組成データの統計解析からの制約
キーワード:Izu-Bonin-Mariana volcanic arc, Amami Sankaku Basin, Kyushu-Palau ridge, Melt inclusion, Statistical analysis
国際深海掘削科学計画第351次研究航海(2014年6~7月に実施)では,伊豆―小笠原―マリアナ(IBM)弧の古島弧である九州パラオ海嶺の西側に位置する奄美三角海盆海域・U1438地点の掘削が行われた.この掘削点からは,5200万年前に太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込みを始め,島弧火成活動が開始した後の,古第三紀におけるIBM弧の火砕性堆積物がコア試料として得られた.IBM弧の火成活動の時間発展を明らかにするため,我々は4000万年前から3000万年前までの古第三紀のIBM弧の火成活動の時間発展を記録しているユニットIII(厚さ1046.4mの堆積物層)から得られたメルト包有物の主要元素および揮発性元素(ClおよびS)を,電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて分析した.メルト包有物は単斜輝石または斜長石に包有されており,その化学組成は低カリウム系列から高カリウム系列の玄武岩から流紋岩まで幅広く多様である.これらのメルト包有物は火砕性堆積物コアから採取されているため,九州パラオ海嶺上の複数の火山に由来する噴出物の混合物である可能性が考えられる.古第三紀のIBM弧の火成活動史をより高い解像度で理解するため,我々は,メルト包有物の化学組成データに対して統計解析(K-meansクラスター分析)を行った.
クラスター分析の結果,メルト包有物はクラスター1から6までの6つのクラスターに分類された.そのうち4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)は玄武岩~安山岩質のメルト包有物である.これら4つのクラスターは,それぞれの未分化メルトがfO2=NNO+1の条件下で結晶分化作用をしたと説明することができる.ただし,それぞれのクラスターの化学組成のバリエーションを完全に説明するためには,部分溶融度が異なるいくつかの未分化メルトが存在し,且つメルト中の含水量にバリエーションが必要であることも分かった.クラスター1のメルト包有物(中カリウム系列、ソレアイト系列の玄武岩~安山岩質メルト包有物)と,クラスター5のメルト包有物(カルクアルカリ系列、高マグネシウム安山岩質のメルト包有物)は独立している.クラスター5のメルト包有物は,枯渇したマントルが部分溶融して生じた初生メルトが結晶分化した一連のメルトであると考えられ,3700万年前より古い時代にのみ出現する.一方,クラスター1のメルト包有物は,肥沃なマントルが部分溶融した初生メルトが結晶分化した一連のメルトであると考えられる.クラスター1はユニットIIIの下部(4000万年前)から上部(3000万年前)まで出現するが、主として、クラスター5が出現しなくなる3700万年前よりも新しい時代に出現する.クラスター3とクラスター4のメルト包有物は,ユニットIIIの下部(4000万年前)から上部(3000万年前)まで一貫して出現する。クラスター3のメルト包有物は、硫黄濃度が比較的高いことで特徴づけられ,硫黄に富むスラブ起源流体によって交代作用を受けたマントルが部分溶融した初生メルトが結晶分化することによって導かれたと考えられる.クラスター4のメルト包有物は,塩素濃度とカリウム濃度が比較的高いことで特徴づけられ,塩素やカリウムに富むスラブ起源流体によって交代作用を受けたマントルが部分溶融して生じた初生メルトが結晶分化することによって導かれたと考えられる.すなわち,上述した4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)のメルト包有物は,マントルウェッジの不均質性を反映していると考えられる.4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)以外に2つのクラスターが存在する.クラスター2は,塩素濃度が異常に高い(最大で1 wt.%)ことで特徴づけられ,クラスター1のメルトが同化作用によって海底熱水中の塩素を取り込んだと考えられる.クラスター6のメルト包有物は,珪長質(デイサイト~流紋岩質)の組成で特徴づけられる.
岩石学・地球化学においてしばしば用いられる2次元のグラフを用いる手法では,メルト包有物のデータをこのように6つに分類することは不可能である.従来は識別できなかった組成トレンドやグループといったデータ構造が識別可能となるという,統計解析の手法の有用性が示された.
クラスター分析の結果,メルト包有物はクラスター1から6までの6つのクラスターに分類された.そのうち4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)は玄武岩~安山岩質のメルト包有物である.これら4つのクラスターは,それぞれの未分化メルトがfO2=NNO+1の条件下で結晶分化作用をしたと説明することができる.ただし,それぞれのクラスターの化学組成のバリエーションを完全に説明するためには,部分溶融度が異なるいくつかの未分化メルトが存在し,且つメルト中の含水量にバリエーションが必要であることも分かった.クラスター1のメルト包有物(中カリウム系列、ソレアイト系列の玄武岩~安山岩質メルト包有物)と,クラスター5のメルト包有物(カルクアルカリ系列、高マグネシウム安山岩質のメルト包有物)は独立している.クラスター5のメルト包有物は,枯渇したマントルが部分溶融して生じた初生メルトが結晶分化した一連のメルトであると考えられ,3700万年前より古い時代にのみ出現する.一方,クラスター1のメルト包有物は,肥沃なマントルが部分溶融した初生メルトが結晶分化した一連のメルトであると考えられる.クラスター1はユニットIIIの下部(4000万年前)から上部(3000万年前)まで出現するが、主として、クラスター5が出現しなくなる3700万年前よりも新しい時代に出現する.クラスター3とクラスター4のメルト包有物は,ユニットIIIの下部(4000万年前)から上部(3000万年前)まで一貫して出現する。クラスター3のメルト包有物は、硫黄濃度が比較的高いことで特徴づけられ,硫黄に富むスラブ起源流体によって交代作用を受けたマントルが部分溶融した初生メルトが結晶分化することによって導かれたと考えられる.クラスター4のメルト包有物は,塩素濃度とカリウム濃度が比較的高いことで特徴づけられ,塩素やカリウムに富むスラブ起源流体によって交代作用を受けたマントルが部分溶融して生じた初生メルトが結晶分化することによって導かれたと考えられる.すなわち,上述した4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)のメルト包有物は,マントルウェッジの不均質性を反映していると考えられる.4つのクラスター(クラスター1,3,4,5)以外に2つのクラスターが存在する.クラスター2は,塩素濃度が異常に高い(最大で1 wt.%)ことで特徴づけられ,クラスター1のメルトが同化作用によって海底熱水中の塩素を取り込んだと考えられる.クラスター6のメルト包有物は,珪長質(デイサイト~流紋岩質)の組成で特徴づけられる.
岩石学・地球化学においてしばしば用いられる2次元のグラフを用いる手法では,メルト包有物のデータをこのように6つに分類することは不可能である.従来は識別できなかった組成トレンドやグループといったデータ構造が識別可能となるという,統計解析の手法の有用性が示された.