[SCG65-P04] Stratigraphic changes and sedimentary facies of lacustrine sediment gravity flow deposits in the Middle Pleistocene Miyajima Formation, Tochigi Prefecture, northeast Japan
キーワード:sediment gravity flow deposit, hyperpycnal flow, varve, lacustrine sediment, Miyajima Formation, Shiobara Group
重力流堆積物は深海から湖まで広く認められ,洪水や地震などのイベントとして形成される.海成の場合はその堆積学的な研究が多く行われている一方,これらを堆積させた洪水と崩壊の堆積物の識別やその流れの推定は難しい.湖成重力流堆積物は主に堆積物コアによって研究が行われており,より高い解像度の解析が可能である上,イベントの識別が可能な場合がある.本研究では,露頭における湖成重力流堆積物の堆積相解析による堆積した流れの推定とその層序的変化の取得を行った.
対象とした宮島層は東日本栃木県の那須塩原市に分布する中部更新統の湖成堆積物である.宮島層は年縞堆積物を主体とし,重力流堆積物を多量に挟在する.年縞はStephanodiscus niagaraeを主体とする明るい葉理と流入堆積物を主体とする暗い葉理で構成される.対象とした露頭は那須塩原市の中塩原にあり,川沿いに連続的に露出する.本研究では露頭の観察を行うとともに連続写真および柱状試料を採取し,重力流堆積物の層相に基づき区分を行った.また,これらのrecurrence interval,層厚やタイプの層序的変化も検討した.
連続写真を用いた検討では,1177年分の年縞と634層の重力流堆積物が得られた.年縞の平均層厚は1.2 mmであり,重力流堆積物の平均層厚は9.3 mmである.重力流堆積物は,310層の級化するタイプ,315層の塊状タイプ,9層の逆級化するタイプに区分できる.最上部の数層を除いて,重力流堆積物は主にシルト質なマトリックスを持つ.また,それぞれのタイプは,下位を侵食するか否か,リップアップクラストを含むか否か,砂質か否かで細分した.
本層の重力流堆積物は流入性のシルトや砂を含むため,ほとんどは洪水性であると考えられる.また,スランプ構造を示すものや珪藻のブロックを多量に含む,洪水によって引き起こされた斜面崩壊堆積物と考えられるものも含む.基本的に,基底を侵食するタイプの重力流は湖底まで潜り込んだハイパーピクナル流,基底を侵食しないタイプの重力流は湖面もしくは温度躍層で潜り込まずに一度拡散して沈降したホモピクナル流もしくはハイポピクナル流であると推定される.重力流堆積物に認められる級化は通常のハイパーピクナイトやホモピクナルあるいはハイポピクナル流による堆積の特徴である一方,逆級化はハイパーピクナル流の加速の段階の堆積が侵食されなかった場合であると推定される.リップアップクラストを含むものは斜面や湖底で基底を巻き込んだと示唆される.塊状のタイプのうち,細粒なものはフロックとして堆積した可能性が示唆される.
本層の年縞と重力流堆積物は下部720年と上部450年で異なる傾向を示す.年縞は上部では,1年に2セットの年縞を形成した”double laminae”と重力流堆積物は侵食しないタイプが多い.一方,下部では,double laminaeは少なく,重力流堆積物は侵食するタイプが多い.これらは下部と上部で湖水の成層状態が異なることを示唆する.double laminaeは湖水が1年間に夏季と“寒い”冬季の2回成層し,珪藻の繁茂のピークが2度起こったことで形成される.そのため,上部450年では,重力流は湖水が成層したもしくはその成層状態が残っていた時期に湖底まで潜り込むことが難しく,そのため侵食しないタイプが増加したと示唆される.
対象とした宮島層は東日本栃木県の那須塩原市に分布する中部更新統の湖成堆積物である.宮島層は年縞堆積物を主体とし,重力流堆積物を多量に挟在する.年縞はStephanodiscus niagaraeを主体とする明るい葉理と流入堆積物を主体とする暗い葉理で構成される.対象とした露頭は那須塩原市の中塩原にあり,川沿いに連続的に露出する.本研究では露頭の観察を行うとともに連続写真および柱状試料を採取し,重力流堆積物の層相に基づき区分を行った.また,これらのrecurrence interval,層厚やタイプの層序的変化も検討した.
連続写真を用いた検討では,1177年分の年縞と634層の重力流堆積物が得られた.年縞の平均層厚は1.2 mmであり,重力流堆積物の平均層厚は9.3 mmである.重力流堆積物は,310層の級化するタイプ,315層の塊状タイプ,9層の逆級化するタイプに区分できる.最上部の数層を除いて,重力流堆積物は主にシルト質なマトリックスを持つ.また,それぞれのタイプは,下位を侵食するか否か,リップアップクラストを含むか否か,砂質か否かで細分した.
本層の重力流堆積物は流入性のシルトや砂を含むため,ほとんどは洪水性であると考えられる.また,スランプ構造を示すものや珪藻のブロックを多量に含む,洪水によって引き起こされた斜面崩壊堆積物と考えられるものも含む.基本的に,基底を侵食するタイプの重力流は湖底まで潜り込んだハイパーピクナル流,基底を侵食しないタイプの重力流は湖面もしくは温度躍層で潜り込まずに一度拡散して沈降したホモピクナル流もしくはハイポピクナル流であると推定される.重力流堆積物に認められる級化は通常のハイパーピクナイトやホモピクナルあるいはハイポピクナル流による堆積の特徴である一方,逆級化はハイパーピクナル流の加速の段階の堆積が侵食されなかった場合であると推定される.リップアップクラストを含むものは斜面や湖底で基底を巻き込んだと示唆される.塊状のタイプのうち,細粒なものはフロックとして堆積した可能性が示唆される.
本層の年縞と重力流堆積物は下部720年と上部450年で異なる傾向を示す.年縞は上部では,1年に2セットの年縞を形成した”double laminae”と重力流堆積物は侵食しないタイプが多い.一方,下部では,double laminaeは少なく,重力流堆積物は侵食するタイプが多い.これらは下部と上部で湖水の成層状態が異なることを示唆する.double laminaeは湖水が1年間に夏季と“寒い”冬季の2回成層し,珪藻の繁茂のピークが2度起こったことで形成される.そのため,上部450年では,重力流は湖水が成層したもしくはその成層状態が残っていた時期に湖底まで潜り込むことが難しく,そのため侵食しないタイプが増加したと示唆される.