JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG67] [EE] 海溝海側で海洋プレートに生じる過程:沈み込み帯へのインプット

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山野 誠(東京大学地震研究所)、森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、藤江 剛(海洋研究開発機構)、Jason Phipps Morgan(Royal Holloway University of London)

[SCG67-P09] Effect of pore water on elastic wave velocity of serpentinites and implication for serpentinization at outer-rise region

*畠山 航平1片山 郁夫1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:Serpentinite, Pore fluid, Elastic wave velocity, Outer-rise region

近年の海底地震波探査からアウターライズ領域において地震波の低速度領域が観測されている (e.g., Fujie et al., 2013; Shillington et al., 2015)。この地震波の低速度はマントル領域まで達するため、アウターライズ断層から海水が供給され蛇紋岩が形成していると解釈されている(e.g., Ranero et al., 2003)。カンラン岩の地震波速度は蛇紋岩化率の増加とともに低下することが実験から報告されており(Christensen, 2004)、観測された速度と比較することでマントルの蛇紋岩化率が見積もられている。しかし、蛇紋岩には反応に伴う体積膨張により多くの空隙が発達しており (Macdonald and Fyfe, 1985)、そのような空隙には水で満たされている可能性が高い。そこで本研究では様々な空隙率をもつ蛇紋岩の弾性波速度に対する間隙水の効果を調べ、アウターライズ領域における蛇紋岩化を再評価した。
 実験試料には嶺岡帯に産出する蛇紋岩と、南マリアナ海溝、トンガ海溝の海底からドレッヂされた蛇紋岩を用いた。それらは低温型蛇紋石であるリザーダイト・クリソタイルから主に構成される。これらの試料は、画像解析から蛇紋岩化率が86–100%であった。空隙率は気相置換法によって測定し、嶺岡帯試料では0.3–4.4%、海底ドレッヂ試料は9.6–26.7%であった。実験には広島大学設置の容器内変形透水試験機を用いて、パルス透過法により弾性波速度を測定した。実験は乾燥条件に加え、含水条件では間隙水圧を10MPa一定に制御した条件で測定を行った。封圧は200MPaまで加圧し、温度は室温で測定した。
 弾性波速度は封圧の増加に伴って増加し、乾燥条件での封圧200MPaの速度はChristensen(2004)の密度と速度の関係とほぼ一致した。含水条件ではP波速度は乾燥条件の速度より低封圧下では8%程度、高封圧下では3%程度速い速度を示した。これは空隙が水で満たされることで岩石の体積弾性率が増加し、P波速度が上昇すると考えられる。一方で、S波速度は空隙率が低い試料では水の効果は見られないが、空隙率が高い試料では7%程度低下した。これは剛性率に対しては流体の効果は小さいが、密度が増加するためにS波速度が低下したと考えられる
 これまでの研究では、最上部マントルの速度異常から蛇紋岩化率は20%程度と見積もられているが、蛇紋岩の空隙率を10%とし、その空隙が水で満たされる場合、蛇紋岩化率はこれまでの見積もりより低くなり15%程度となる。このようにマントルでの蛇紋岩の分布ならびに割合を評価するには、岩石中の空隙率を正確に把握する必要がある。