JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] [EJ] 海洋底地球科学

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:小森 省吾(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、座長:戸塚 修平(九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻)

11:30 〜 11:45

[SCG71-16] 海底熱水活動域岩石サンプルの比抵抗特性と鉱物種の関係性

*大田 優介1後藤 忠徳1柏谷 公希1小池 克明1林 為人1多田井 修3笠谷 貴史2金松 敏也2町山 栄章2 (1.京都大学大学院工学研究科、2.海洋研究開発機構、3.マリンワークジャパン)

キーワード:海底熱水鉱床、アーチーの式、電気伝導度、岩石物理学モデル

現在,金属資源量調査を目的として,海底熱水活動域に対して物理探査が行われている.しかしながら,物理探査で得られる情報には限りがあり,鉱床の品位および空間分布の定量的解釈には新たな技術開発が必要である.このような問題を解決する手段のひとつとして,対象地域の物性・化学組成の相関関係を組み込んだ適切な岩石物理学モデルを構築するという手法が挙げられる.これは岩石物理学に基づく複合解析の概念として知られ(例えば鈴木,2013),複数の物性情報を元に,間隙率や岩石組成などの情報を推定する手法である.本研究では物理探査の複合解析によって資源量評価を行うことを最終的な目的として,海底熱水活動域において採取された岩石の物性および化学組成の測定・分析を行い,それらを基に基礎的なモデルの構築を行った.
 本研究で構築した岩石物理学モデルは,間隙率およびその他複数のパラメータに基づいて岩石の比抵抗を与えるものである.このような比抵抗に重点を置いたモデルを構築した理由としては,海底熱水活動域においては電気探査などによる比抵抗構造の推定が金属資源量調査に有用であるということが先行研究でも確認されており(例えばKowalczyk, 2008),また海底熱水活動域において豊富に見られるpyriteなどの硫化鉱物が極めて高い導電性を持つことが知られていることが挙げられる.
 適切なモデル構築のためには,岩石サンプルが持つ物理的・化学的特性を明らかにすることが必要である.そこでまず我々は,海底熱水活動域として知られる野甫サイト,伊是名海穴および伊平屋北海丘といった、沖縄トラフ内の3地域から採取した岩石サンプルに対して,複数の物性の測定,および化学組成の分析を行った.測定項目としては,比抵抗,間隙率,粒子密度,自然残留磁化,金属元素含有率である.特に比抵抗測定においては,間隙水の導電性に対する比抵抗の依存特性を明らかにするため,鈴木(2003)を参考に,間隙水を満たすNaCl溶液の濃度を変更した複数の測定を行った.これらの測定・分析よって得られたデータに対し,我々の新たなモデルを適用することで,モデルの各パラメータを決定するとともに他の物性および化学組成との比較に用いた.
 結果として,構築したモデルの各パラメータと特定の元素含有率との間に相関性が確認された.これは本研究において構築したモデルが,比抵抗という物性情報から鉱物種という化学組成情報を抽出し得るものであるという可能性を示唆している.今後はこの比抵抗モデルを発展させ,他の物性および化学組成を定量的に組み込むとともに,整合性についてのさらなる検討を行っていく予定である.