JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] [EJ] 海洋底地球科学

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG71-P04] 伊豆小笠原弧須美寿カルデラ北部外輪山(望星サイト)における大規模熱水変質帯の可能性

*坂本 泉1松下 小春1四宮 佑太1八木 雅俊1 (1.東海大学海洋学部)

キーワード:熱水変質帯、海底カルデラ

須美寿カルデラは,伊豆小笠原火山フロント上に位置し,直径約10kmの規模を呈する海底カルデラである.本海域では岩淵(1999)による“しんかい2000”潜航観察により外輪山域における珪化変質や現鉄水酸化物の分布,中央火口丘付近での熱水生物群集の存在が報告されている.近年では,須美寿カルデラ底に於いて熱水マウンドらしい高まりの存在がAUVで観察されている(浦,他2012).東海大学では須美寿カルデラ海域において,2014年から地形・採泥調査を行って来た.本報告では,2016年東海大学海洋学部海洋地球科学科海洋実習3において,須美寿カルデラ域の精密地形測量,水中音響異常探査,ビデオ付き採泥機による岩石試料採取および海底画像取得を行い,その結果北部須美寿カルデラ外輪山山頂部域に、広範囲にわたって低温熱水起源と思われる変質帯(望星サイト)を認めたので報告を行う.
 須美寿カルデラにおける外輪山は,南部・西部・東部・北部で異なった地形特徴が発達している.今回対象とするカルデラ外輪山北部域は,水深200m等深線で囲まれた比較的平坦な頂部を有し,東西方向に延びる痩せ尾根(幅500-1000m:最浅水深150m)が発達している.これに比べ,カルデラ壁南側(内壁)には,比高約600mの急斜面が発達している.このカルデラ内壁には,南北に伸びた海脚状地形と直線状の谷地形が交互に発達し,この急斜面域で行われた採泥では,多量の火山岩(玄武岩〜デイサイト質)が採取されている.
 カルデラ外輪山北部山頂域(水深300-200m)において行った精密地形探査では,東西方向に伸びる痩せ尾根から南側斜面にかけ,小規模であるがマウンド状の高まりおよびリッジ状地形が複数確認され,さらに水中音響異常が約5kmの範囲において複数確認された.引き続き水中音響異常が観察された海域でドレッジ採泥(同時海底画像記録式)では,多量の火山砕屑岩が採取され,海底に火山砕屑岩類が一面に広がる様子がビデオ映像解析で確認された.
 採取された火山砕屑岩は,1)赤色でスコリア質の本質岩片のみから構成されるラピリーストーン試料,2)スコリアと軽石の混合岩片から成り灰白色の石灰質基質の発達した火山礫凝灰岩試料への岩相変化が確認された.赤色ラピリーストーンは岩石内部全体にわたって脆く赤褐色変質を被り,マトリックス中には石灰華(シンター)が発達している.鏡下においても,X線回折を用いた定性分析でも,残念ながら鉄を含んだ鉱物は検出されなかった.しかしながら,これらシンター部分の定量分析(XRF・FP法)結果では,最大で60wt.%をこえる全鉄値が確認された.仮にこれらの石灰華の発達する赤色ラピリーストーンが熱水変質により形成されたと仮定した場合,小規模マウンドの分布と水中音響異常領域が5kmにわたっていた事を併せ,須美寿カルデラ北部外輪山斜面上部から頂部にかけ大規模な熱水変質帯が発達していると推定される.