14:30 〜 14:45
[SCG73-03] 堆積銅鉱床のゴーストゾーン
キーワード:堆積銅鉱床、鉱物帯、ゴーストゾーン
堆積銅鉱床では,これを形成した浸透流の上流側から下流側に向けて,輝銅鉱−斑銅鉱−黄銅鉱−黄鉄鉱の帯状分布が現れると古くから言われてきた。しかしながら,このような帯状分布が実際に発達している例はほとんど報告されておらず,一般には輝銅鉱単鉱物帯かまたはこれと自然銅単鉱物帯が広く分布し,斑銅鉱や黄銅鉱は黄鉄鉱帯の近傍にわずかな幅で産する場合が多いようである。
これまで堆積銅鉱床の生成モデルは,堆積作用時または続成作用時も含めて,幾つか提唱されているが,何れにしても,銅を含む酸化的な流体が堆積物(岩)に浸透し,これが還元されることにより銅鉱化作用を生じることに変わりはない。従って,この鉱化作用のプロセスはいわゆるリアクティブトランスポート(浸透交代作用)の解析スキームで解くことが出来るであろう。
いま,鉱物Bが鉱物AとCの間に安定に存在する,即ち,A+Cの平衡はない,と仮定する。堆積銅鉱床では,Aが輝銅鉱,Bが斑銅鉱でCが黄銅鉱に相当する。そうすると,形成され得る帯状配列は,例えば上流側から,A−B−Cであると推定される。しかしながら,これが実際に形成され得るか否かを判断するためには,CがBによって交代される前縁の移動速度が,BがAにより交代されるそれよりも速いことが確かめられなければならない。そうでない場合には,Cは直接Aによって交代されることになる。この場合,A+Cの平衡条件はないため,この交代前縁とその下流側の溶液の組成は,Cと(存在しない)Bに平衡であるとして前縁速度が計算される。これがB帯がゴーストゾーンと呼ばれる所以である。現実的には,このような場合,BはCを交代して形成されるが,すぐにAによって交代されると考えられる。従って,B帯の幅は時間とともに進展しない(広がらない)であろう。
このスキームを用いて,上記の堆積銅鉱床の帯状分布の置換前縁速度の解析解をMathematica(Wolfram Research)により求めた。一方,鉱化作用の全過程の数値シミュレーションは,MIX99(Hoshino et al., 2000)を用いて行った。以下は,その結果である
(1)浸透流体を還元する初生の還元物質は一般に炭質物と思われるが,この還元作用により流体から黄鉄鉱が沈殿する前縁の移動速度は極めて速いため,後方(上流側)の流体に対しては,この黄鉄鉱が直接の還元物質となる。即ち,黄鉄鉱の溶解前縁の後方で,銅鉱化作用が生じる。
(2)流入口における流体のpHが低い場合には,黄鉄鉱の溶解前縁の後方に輝銅鉱単鉱物帯のみが生じる。
(3)流入溶液のpHが高い場合には,上流側から順に自然銅単鉱物帯−輝銅鉱単鉱物帯となるか,または自然銅単鉱物帯のみが生じる。
(4)解析を行った全ての場合で,斑銅鉱や輝銅鉱が帯を形成することはなく,晶出する条件であっても,黄鉄鉱の溶解前縁に接したゴーストゾーンとなる場合のみであった。
以上の解析結果から,斑銅鉱や輝銅鉱が晶出する場合であっても,直ぐ後方で輝銅鉱により交代される過渡的な鉱物としてであり,このことが,両鉱物の広い鉱化帯が見られない理由であると考えられる。
これまで堆積銅鉱床の生成モデルは,堆積作用時または続成作用時も含めて,幾つか提唱されているが,何れにしても,銅を含む酸化的な流体が堆積物(岩)に浸透し,これが還元されることにより銅鉱化作用を生じることに変わりはない。従って,この鉱化作用のプロセスはいわゆるリアクティブトランスポート(浸透交代作用)の解析スキームで解くことが出来るであろう。
いま,鉱物Bが鉱物AとCの間に安定に存在する,即ち,A+Cの平衡はない,と仮定する。堆積銅鉱床では,Aが輝銅鉱,Bが斑銅鉱でCが黄銅鉱に相当する。そうすると,形成され得る帯状配列は,例えば上流側から,A−B−Cであると推定される。しかしながら,これが実際に形成され得るか否かを判断するためには,CがBによって交代される前縁の移動速度が,BがAにより交代されるそれよりも速いことが確かめられなければならない。そうでない場合には,Cは直接Aによって交代されることになる。この場合,A+Cの平衡条件はないため,この交代前縁とその下流側の溶液の組成は,Cと(存在しない)Bに平衡であるとして前縁速度が計算される。これがB帯がゴーストゾーンと呼ばれる所以である。現実的には,このような場合,BはCを交代して形成されるが,すぐにAによって交代されると考えられる。従って,B帯の幅は時間とともに進展しない(広がらない)であろう。
このスキームを用いて,上記の堆積銅鉱床の帯状分布の置換前縁速度の解析解をMathematica(Wolfram Research)により求めた。一方,鉱化作用の全過程の数値シミュレーションは,MIX99(Hoshino et al., 2000)を用いて行った。以下は,その結果である
(1)浸透流体を還元する初生の還元物質は一般に炭質物と思われるが,この還元作用により流体から黄鉄鉱が沈殿する前縁の移動速度は極めて速いため,後方(上流側)の流体に対しては,この黄鉄鉱が直接の還元物質となる。即ち,黄鉄鉱の溶解前縁の後方で,銅鉱化作用が生じる。
(2)流入口における流体のpHが低い場合には,黄鉄鉱の溶解前縁の後方に輝銅鉱単鉱物帯のみが生じる。
(3)流入溶液のpHが高い場合には,上流側から順に自然銅単鉱物帯−輝銅鉱単鉱物帯となるか,または自然銅単鉱物帯のみが生じる。
(4)解析を行った全ての場合で,斑銅鉱や輝銅鉱が帯を形成することはなく,晶出する条件であっても,黄鉄鉱の溶解前縁に接したゴーストゾーンとなる場合のみであった。
以上の解析結果から,斑銅鉱や輝銅鉱が晶出する場合であっても,直ぐ後方で輝銅鉱により交代される過渡的な鉱物としてであり,このことが,両鉱物の広い鉱化帯が見られない理由であると考えられる。