JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG73] [JJ] 岩石・鉱物・資源

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科)、門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:門馬 綱一(National Museum of Nature and Science)、座長:齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科)

15:00 〜 15:15

[SCG73-05] 冷却節理の発達した玄武岩の風化過程 —近畿北部,田倉山火山の例―

*平田 康人1千木良 雅弘2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:球状風化、柱状節理、玄武岩質溶岩、間隙径分布

近畿北部の第四紀の田倉山火山の玄武岩は柱状節理と低角節理が発達しており,1辺が約0.4 m,高さが0.1-1 mの六角柱状を示す.玄武岩石柱は風化して,表層部が剥離して球状岩塊を露出させている.この風化現象は球状風化と呼ばれており,火成岩に典型的に見られ,また節理の発達した岩盤に生じるものと古くから知られている.しかしながら,岩盤の初生的構造を含めて風化過程が検討されておらず,球状風化の全体像はほとんど解明されていなかった.そこで,我々は柱状節理の発達した玄武岩を対象として球状風化過程を調べた.その結果,玄武岩は冷却節理の成す角や辺の部分に潜在亀裂と同心円状の岩石組織を有し,節理からの化学的風化が進む際にそれらの初生的構造が関係して,球状の形態を示していることが分かった.野外観察によれば,個々の石柱を区切る低角節理は,平面あるいは上下に開いた2つの放物面であり,その面に残る羽毛状組織は石柱が上下方向に引張られて,破断が石柱の中央から柱状節理に向かって拡大したことを示唆する.平面の場合は,柱状節理と低角節理との交わる角や辺の数cm内側に,節理に漸近する曲面状の亀裂が内在し,この亀裂は石柱の外形を成す節理面まで続いていなかった.このような潜在亀裂は柱状節理側にも認められ,柱状節理の成す角が鋭角のところほど石柱の内部に位置することが分かった.また,薄片の観察と間隙径分布の測定は,節理表面で内部に比べて間隙の繋がりが悪く,間隙径が小さいこと示した.さらに岩石に蛍光樹脂を含浸させて紫外線照明下で観察したところ,石柱のより内部においても,間隙径の小さい領域が柱状節理の軸に対して同心円状の縞模様として観察された.鉱物化学分析は,節理からの酸素と水の拡散によって,石柱内ではカンラン石がイディングス石化し,斜長石がハロイサイトを生じ,節理表面で加えて水酸化鉄とギブサイトを生じたことを示した.この際に,間隙径の小さい領域は周囲に比べてハロイサイトの形成量が少なかった.この結果は風化の進行速度が初生的な間隙構造によって制限されていることを示唆する.冷却節理の発達した玄武岩は,潜在亀裂の伸展による角部の剥離,また間隙構造の風化への影響によって球状の風化形態になりやすいと考えられる.