JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG73] [JJ] 岩石・鉱物・資源

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科)、門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科)

16:15 〜 16:30

[SCG73-09] 温海ドレライト岩床における斜長石の平均アスペクト比変化

*近藤 健太郎1星出 隆志1 (1.秋田大学)

キーワード:アスペクト比、冷却速度、温海ドレライト

火成岩におけるマグマの冷却・結晶化の時間スケールを明らかにすることは、様々なマグマプロセスの時間スケールを決める上で重要である。火成岩に普遍的に含まれる斜長石の実験的研究により、過冷却や冷却速度が増加すると異なる結晶面間の成長速度の違いが大きくなり[100]に平行な方向により伸長することが知られている(Muncill and Lasaga, 1988; Pupier et al., 2008)。これを利用して最近Holness (2014)は、比較的マグマ組成の似た厚さの異なる6枚の岩床(玄武岩~玄武岩質安山岩質;層厚約3 ~ 360 m)の斜長石平均アスペクト比の垂直変化を調べ、斜長石アスペクト比と熱伝導計算で見積もられる冷却時間との間に良い相関があることを見出し、斜長石のアスペクト比が火成岩体の冷却速度計として利用できる可能性を示した。この論文において、斜長石粒子の形状はマグマ組成の小さな違いにはあまり敏感ではないと述べられており、マグマの化学組成の違いがアスペクト比変化に与える影響についてはあまり詳細に論じられていない。そこで我々は、化学組成の異なるマグマの場合にも同様の関係が成り立つのかどうかを明らかにするため、我が国で比較的良く研究されているアルカリ玄武岩質貫入岩体である温海ドレライト岩床群(Kushiro, 1964)のうち厚さの異なる2枚の岩体(萱岡シート; 層厚120 m, 白山島の貫入岩; 層厚約6 m)を対象に、鏡下での石基の斜長石アスペクト比測定と、熱伝導計算による岩体の冷却速度推定を行った。
その結果、①斜長石アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)は、厚い萱岡シートで約3.8-5.6、白山島の貫入岩で6.4-9.8であること、②厚い岩床より薄い岩床のほうが斜長石の平均アスペクト比が大きく、両岩体の様々な層準の斜長石平均アスペクト比と計算される冷却時間の対数との間に逆相関があること、③厚い岩床である萱岡シートでは、斜長石アスペクト比が岩体の中央部付近で小さくそこから岩体の上下縁辺部に向かって増加するが、下部の母岩との接触部近傍(接触部から0 - 4 mまで)では再びアスペクト比が減少に転じること(Fig. 1)、などが明らかになった。②と③の特徴はHolness (2014)で報告された特徴と同じである。しかし、同程度の厚さの岩床で比べた場合、温海ドレライト岩床の結果はHolness(2014)の結果(例えば、層厚129mのWhin sillで斜長石アスペクト比約3.0-3.6)に比べて斜長石アスペクト比の値が有意に大きい。Holness (2014)で扱われている岩体がソレアイト質であるのに対し、我々の扱った岩体がアルカリ玄武岩質であることを考慮すると、斜長石アスペクト比の値が大きくなった要因として元素拡散係数に対するマグマの粘性の影響が可能性の1つとして考えられる。