[SCG73-P06] 岩手県崎浜、茨城県妙見山、福岡県長垂、宮崎県大崩山のLiペグマタイトから産する電気石の化学組成
キーワード:Liペグマタイト、電気石、崎浜、長垂、妙見山、大崩山
日本列島には花崗岩体に伴い多くの規模の異なるペグマタイトが分布している。しかしながら、Liが濃集するような組成的に発展したペグマタイトの数は限られている。本研究では、東北日本の北上帯に位置する岩手県崎浜、阿武隈帯に位置する茨城県妙見山、西南日本内帯の北部九州に位置する福岡県長垂、西南日本外帯に位置する宮崎県大崩山のLiペグマタイトについて鉱物学的研究を行い、特に電気石の化学組成の変化の傾向について比較を行った。
いずれのLiペグマタイトも産状や産出鉱物が大きく異なるが、共通して電気石を多く産する。また、電気石はペグマタイト岩体の縁辺部から中心部にかけて連続的に分布しており、それぞれ産状や肉眼的特徴も異なる(e.g., 白勢・上原2012; 2016; Shirose and Uehara, 2013)。電気石超族鉱物はXY3Z6(T6O18)(BO3)3V3Wの一般式で示され、X = Na,Ca,K,Y = Fe2+,Mg,Mn2+,Al,Li,Fe3+,Cr3+,Z = Al,Fe3+,Mg,Cr3+,T = Si,Al,V = OH,O,W = OH,F,Oなどの元素が入る(Henry et al., 2011)。Liペグマタイト中では、岩体の縁辺部から中心部にかけて電気石のY席中のFe2+が(Li+Al)に置換される組成変化が顕著であり、それはペグマタイトメルトの組成的な発展を反映している(e.g., Jolliff et al., 1986; Selway et al., 1999)。
長垂及び妙見山のLiペグマタイトは他のペグマタイトと比較して規模が大きく、Liに加え、Cs、Taの濃集もみられる組成的に発展したペグマタイトである。また、脈状のペグマタイトであり晶洞を伴わないのも特徴的である。電気石は半自形の放射状集合が多く、粒径は小さい。中心部から産するものは白雲母に変質し濁っているものが多い。崎浜のLiペグマタイトは脈状のペグマタイトであり、晶洞を伴う部分もある。電気石は、石英と連晶組織をなすもの、半自形から自形のものがあり、中心部に向かって伸長している。結晶粒径は大きく径10cmに達するものもある。大崩山のペグマタイトはミアロリティックな空隙を伴うREEペグマタイト中の小規模なLiペグマタイトであり、晶洞を伴う。電気石は半自形から自形のものがある。いずれのペグマタイトにおいても電気石は、縁辺部から中心部に向かって、黒色から濃色、淡色へと色が変化している。
EPMAを用いて電気石について化学分析を行ったところ、いずれのペグマタイトにおいても、縁辺部から中心部に向かって電気石のY(Fe2+) ↔ Y(Li+Al)の置換が顕著であった。しかしながら、崎浜の電気石についてはYMn2+を特徴的に多く含み、Y(Fe2+) ↔ Y(Mn2++Li+Al)の置換の後に、Y(Mn2+) ↔ Y(Li+Al)といった置換反応が顕著に生じている。YMn2+の含有量の変化については、産地ごとに異なる組成変化の傾向を示し、大崩山の電気石は晶洞の結晶中で急激にYMn2+に富む(Figure 1)。また、長垂についてはYZn2+の含有(<0.2 apfu)が特徴的である。これらの化学的特徴は共生鉱物とも調和的であり、崎浜では益富雲母の産出が特徴的にみられ、長垂では亜鉛を含有する電気石の周囲に亜鉛スピネルが産出する。電気石の化学組成の変化の傾向を比較することでペグマタイト岩体の持つ化学的な特徴をより詳細に比較することができる。
いずれのLiペグマタイトも産状や産出鉱物が大きく異なるが、共通して電気石を多く産する。また、電気石はペグマタイト岩体の縁辺部から中心部にかけて連続的に分布しており、それぞれ産状や肉眼的特徴も異なる(e.g., 白勢・上原2012; 2016; Shirose and Uehara, 2013)。電気石超族鉱物はXY3Z6(T6O18)(BO3)3V3Wの一般式で示され、X = Na,Ca,K,Y = Fe2+,Mg,Mn2+,Al,Li,Fe3+,Cr3+,Z = Al,Fe3+,Mg,Cr3+,T = Si,Al,V = OH,O,W = OH,F,Oなどの元素が入る(Henry et al., 2011)。Liペグマタイト中では、岩体の縁辺部から中心部にかけて電気石のY席中のFe2+が(Li+Al)に置換される組成変化が顕著であり、それはペグマタイトメルトの組成的な発展を反映している(e.g., Jolliff et al., 1986; Selway et al., 1999)。
長垂及び妙見山のLiペグマタイトは他のペグマタイトと比較して規模が大きく、Liに加え、Cs、Taの濃集もみられる組成的に発展したペグマタイトである。また、脈状のペグマタイトであり晶洞を伴わないのも特徴的である。電気石は半自形の放射状集合が多く、粒径は小さい。中心部から産するものは白雲母に変質し濁っているものが多い。崎浜のLiペグマタイトは脈状のペグマタイトであり、晶洞を伴う部分もある。電気石は、石英と連晶組織をなすもの、半自形から自形のものがあり、中心部に向かって伸長している。結晶粒径は大きく径10cmに達するものもある。大崩山のペグマタイトはミアロリティックな空隙を伴うREEペグマタイト中の小規模なLiペグマタイトであり、晶洞を伴う。電気石は半自形から自形のものがある。いずれのペグマタイトにおいても電気石は、縁辺部から中心部に向かって、黒色から濃色、淡色へと色が変化している。
EPMAを用いて電気石について化学分析を行ったところ、いずれのペグマタイトにおいても、縁辺部から中心部に向かって電気石のY(Fe2+) ↔ Y(Li+Al)の置換が顕著であった。しかしながら、崎浜の電気石についてはYMn2+を特徴的に多く含み、Y(Fe2+) ↔ Y(Mn2++Li+Al)の置換の後に、Y(Mn2+) ↔ Y(Li+Al)といった置換反応が顕著に生じている。YMn2+の含有量の変化については、産地ごとに異なる組成変化の傾向を示し、大崩山の電気石は晶洞の結晶中で急激にYMn2+に富む(Figure 1)。また、長垂についてはYZn2+の含有(<0.2 apfu)が特徴的である。これらの化学的特徴は共生鉱物とも調和的であり、崎浜では益富雲母の産出が特徴的にみられ、長垂では亜鉛を含有する電気石の周囲に亜鉛スピネルが産出する。電気石の化学組成の変化の傾向を比較することでペグマタイト岩体の持つ化学的な特徴をより詳細に比較することができる。