[SCG73-P08] 福岡県長垂lepidoliteについての鉱物学的研究
キーワード:長垂、Li pegmatite、lepidolite、ポリタイプ、trilithionite、polylithionite
1. はじめに
福岡県長垂のLiペグマタイトは様々な希元素に富んだ鉱物が産出することが知られており, 古くから様々な鉱物に関する研究がなされている。最近ではelbaiteについての研究(白勢・上原, 2013)を行い、ペグマタイト岩体の縁辺部から中心部のelbaiteの化学組成の変化等について報告した。特に長垂のelbaiteは国内の他産地(茨木県妙見山など)と比べると微量のZnが含まれているという特徴があった。本研究では記載が不十分であった、長垂に産出する代表的なLi鉱物であるlepidoliteについての研究を行った。Lepidoliteはtrilithionite K2(Li3Al3)(Si6Al2)O20 (OH,F)4とpolylithionite K2(Li4 Al2)Si8O20(OH,F)4を端成分にとる固溶体系列の名称である。またlepidoliteと同様Liを含む雲母にはpolylithioniteとsiderophylliteを端成分に持つzinnwaldite系列も存在する。 今回の研究では長垂に産するlepidoliteの産状,肉眼的特徴から分類を行い,代表的な試料を選び,化学組成,結晶構造(ポリタイプ)を明らかにすることを目的とした。Muscovite-lepidolite系列、及びzinnwaldite系列の研究は古くからなされており、例えばFoster(1960)ではmuscoviteからlepidoliteへの組成や構造の変化について述べられており、特にmuscoviteとlepidoliteの中間部分に関しては現在でも議論が続けられている(Roda et al., 2007など)。
2. 試料及び実験手法
本研究に用いた試料は,これまでに収集した標本をもとに肉眼観察により分類を行い, その中で代表的な試料を用いて実験を行った。長垂産lepidoliteの特徴として, 色は無色~桃色、紫色のものがほとんどで, 結晶の大きさは0.1mm以下のものから最大数㎝程度のものまで存在する。共生鉱物としてはquartz, albite, K-feldspar, columbiteなどが挙げられる。実験にはRigaku製湾曲イメージングプレートX線回折装置RINT RAPID Ⅱを用いて鉱物種の同定, ポリタイプの決定を行い, JEOL製FE-EPMA JXA-8530Fを用いて化学組成の分析を行った。
3. 結果
長垂のlepidoliteのポリタイプは1M, 2M1, 2M2の3種類が確認され, 2M1を示すものが最も多い。また, 1Mポリタイプ単体での結晶は確認されず, 2M1あるいは2M2混在していることが確認された。Fig.1に各試料の化学分析値をSiO2-Al2O3(重量%)図に示した。この結果から, 長垂のlepidoliteはtrilithioniteの端成分に近いものが多く, zinnwaldite系列 の成分も多少含まれていることがわかる。また, ポリタイプを区別して考えると, 2M1に比べて, 2M2のポリタイプを持つものの方がpolylithioniteの組成に近いlepidolite系列の化学組成をもつ傾向がある。Fig.2には偏光顕微鏡下において見られたlepidoliteのゾーニングを示した。EPMAを用いた化学分析を行うと、中心から外側にかけてAlが減少し、Si,, Li, Mn, Fの増加する傾向が見られた。
福岡県長垂のLiペグマタイトは様々な希元素に富んだ鉱物が産出することが知られており, 古くから様々な鉱物に関する研究がなされている。最近ではelbaiteについての研究(白勢・上原, 2013)を行い、ペグマタイト岩体の縁辺部から中心部のelbaiteの化学組成の変化等について報告した。特に長垂のelbaiteは国内の他産地(茨木県妙見山など)と比べると微量のZnが含まれているという特徴があった。本研究では記載が不十分であった、長垂に産出する代表的なLi鉱物であるlepidoliteについての研究を行った。Lepidoliteはtrilithionite K2(Li3Al3)(Si6Al2)O20 (OH,F)4とpolylithionite K2(Li4 Al2)Si8O20(OH,F)4を端成分にとる固溶体系列の名称である。またlepidoliteと同様Liを含む雲母にはpolylithioniteとsiderophylliteを端成分に持つzinnwaldite系列も存在する。 今回の研究では長垂に産するlepidoliteの産状,肉眼的特徴から分類を行い,代表的な試料を選び,化学組成,結晶構造(ポリタイプ)を明らかにすることを目的とした。Muscovite-lepidolite系列、及びzinnwaldite系列の研究は古くからなされており、例えばFoster(1960)ではmuscoviteからlepidoliteへの組成や構造の変化について述べられており、特にmuscoviteとlepidoliteの中間部分に関しては現在でも議論が続けられている(Roda et al., 2007など)。
2. 試料及び実験手法
本研究に用いた試料は,これまでに収集した標本をもとに肉眼観察により分類を行い, その中で代表的な試料を用いて実験を行った。長垂産lepidoliteの特徴として, 色は無色~桃色、紫色のものがほとんどで, 結晶の大きさは0.1mm以下のものから最大数㎝程度のものまで存在する。共生鉱物としてはquartz, albite, K-feldspar, columbiteなどが挙げられる。実験にはRigaku製湾曲イメージングプレートX線回折装置RINT RAPID Ⅱを用いて鉱物種の同定, ポリタイプの決定を行い, JEOL製FE-EPMA JXA-8530Fを用いて化学組成の分析を行った。
3. 結果
長垂のlepidoliteのポリタイプは1M, 2M1, 2M2の3種類が確認され, 2M1を示すものが最も多い。また, 1Mポリタイプ単体での結晶は確認されず, 2M1あるいは2M2混在していることが確認された。Fig.1に各試料の化学分析値をSiO2-Al2O3(重量%)図に示した。この結果から, 長垂のlepidoliteはtrilithioniteの端成分に近いものが多く, zinnwaldite系列 の成分も多少含まれていることがわかる。また, ポリタイプを区別して考えると, 2M1に比べて, 2M2のポリタイプを持つものの方がpolylithioniteの組成に近いlepidolite系列の化学組成をもつ傾向がある。Fig.2には偏光顕微鏡下において見られたlepidoliteのゾーニングを示した。EPMAを用いた化学分析を行うと、中心から外側にかけてAlが減少し、Si,, Li, Mn, Fの増加する傾向が見られた。