JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG73] [JJ] 岩石・鉱物・資源

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科)、門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

[SCG73-P13] 浅間火山火砕噴出物の含水量と水和

小島 圭1、*佐藤 博明2鈴木 桂子3佐藤 鋭一4 (1.元神戸大学理学部地球惑星科学科,現所属:インソース(株)、2.元神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、3.神戸大学大学院理学研究科惑星科学専攻、4.神戸大学大学教育推進機構)

キーワード:火砕物、浅間火山、含水量、ガラスの水和

浅間火山の火砕噴出物の全岩含水量の測定を行った.方法は,いったん,50℃,24時間以上保持して乾燥させた試料を,ふるいにかけ,4-8mm径の軽石を半分に切断し片方はKarl-Fischer滴定法で1000℃まで昇温して含水量を求めた.軽石片の残り半分を研磨薄片にしてBSE像の観察,ガラスの化学分析をおこなった.代表的な試料については,段階的加熱による脱水挙動を見た.試料は浅間火山の,白糸の滝降下軽石(20ka),嬬恋降下軽石(13ka),小諸火砕流(13ka)天仁降下軽石(A.D.1108),追分火砕流(A.D.1108),天明降下軽石(A.D.1783),吾妻火砕流(A.D.1783)を用いた.段階加熱実験では,どの試料でも50℃迄の脱水が18-35%で,その後は昇温に伴い500-700℃迄脱水が継続する.白糸の滝降下軽石と小諸火砕流では200-400℃の間の脱水量がほぼ50%で多かった.全岩含水量測定は総計159試料について行い,それぞれの噴出物の平均値,標準偏差,試料数は,白糸の滝降下軽石:2.60wt%, 0.38, 3,嬬恋降下軽石:2.97, 0.79, 9,小諸火砕流:2.19, 0.51, 27,天仁降下軽石: 0.50, 0.56, 68,追分火砕流0.59, 0.21, 9, 天明降下軽石0.46, 0.09, 32,吾妻火砕流0.65, 0.38, 11,となった.天仁噴火(A.D.1108年)以降の若い試料でも,一部1wt%を超える高含水量を示すものが認められた.ガラスのSiO2量は,白糸降下軽石70-71wt%,嬬恋降下軽石68-77wt%,小諸火砕流68-80wt%(多くは75-80wt%),天仁降下軽石70-77wt%,追分火砕流63-67wt%,天明降下軽石68-72wt%, 吾妻火砕流60-73wt%となった.バルク含水量とガラスSiO2量には直接相関は認められない.より古い試料の電顕のBSE像ではガラス壁から離れた部分に高輝度(平均原子番号が高い)の部分が残っており,この部分は水和が不十分な部分であると考えられる.今回の分析では1000年より若い試料では平均0.46-0.65wt%,1万年より古い試料では平均2.2-2.9wt%と明瞭な違いが見られたが,噴火様式,噴火規模,ガラス化学組成との相関は強くはなく,1万年より古い試料の高含水量は水和による影響が大きいと判断される.従来の研究でも新鮮な火砕噴出物の含水量は0.4-1wt%のものが多く,若い(<1000年)試料のプリニー式噴火等の爆発的噴火で生じる火砕物の含水量は噴火の際の急冷マグマ含水量に近く,水和の影響は比較的少ないと考えられる.