JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG74] [JJ] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、田阪 美樹(島根大学 )、座長:清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

10:00 〜 10:15

[SCG74-05] 微細粒多結晶氷の変形における固体微粒子と結晶粒界の効果について

*猿谷 友孝1中島 甲葵1繁山 航2高田 守昌1本間 智之1東 信彦1東 久美子2,3 (1.長岡技術科学大学、2.総合研究大学院大学、3.国立極地研究所)

キーワード:氷床流動、固体微粒子

グリーンランド氷床の変化は全球規模の気候変動において大きな影響を持っている。氷床氷の挙動や質量変化を理解することは、海面上昇や海洋循環変動などの高精度予測に必要不可欠である。特にNEGISと呼ばれるグリーンランド北東部の氷流は周囲と比べて流動速度が大きく、その原因解明が求められている(Joughin et al., 2010)。氷床流動は大きな時空間スケールを持っているが、その流動則を支配するのは氷床を構成する多結晶氷のマイクロスケールの物理現象であることがわかってきた(Faria et al., 2014)。大粒径の多結晶氷の流動則は室内実験によってよく理解されているが、実際の氷床氷は様々な要因によって結晶組織が複雑化されている。氷床コアに局所的に分布するクラウディバンドと呼ばれる層は不純物を多く含んでおり、周囲と比べて結晶粒径が微細になっている。固体微粒子と氷の相互作用についてはこれまでも議論されてきたが(Rempel and Worster, 1999, Durand et al., 2006)、多結晶氷や氷床コアにおける詳細な影響については未解明な点が多く残されている。
 我々は微細粒多結晶氷の力学特性と固体微粒子の影響について調べるためにシリカをドープした人工氷(粉氷を加圧して得られた圧密氷)を用いて様々な温度圧力条件の下での塑性変形実験を行った。一連の実験の結果、1)シリカ含有氷は純水氷に比べて結晶粒径が小さいこと、2)シリカ含有氷の変形速度(歪速度)は純水氷に比べて速いこと、3)純水氷・シリカ含有氷ともに最小歪速度(定常クリープが)が現れないことが明らかになった。一般的な金属は不純物を含むと塑性変形しにくくなるという性質を持っているが、固体微粒子含有によって歪速度が大きくなるという本結果は金属とは逆の傾向である。大粒径の多結晶氷の塑性変形は転位クリープが支配的であることが先行研究から明らかになっており、様々な氷床流動モデルで採用されてきた(Cuffey and Paterson, 2010)。しかしながら、一般的に転位クリープは粒径に依らないため、本実験で得られた粒径依存性は結晶粒界が塑性変形に影響している可能性を示唆している。
 本発表では様々な温度圧力条件下で行った塑性変形実験を元に、固体微粒子が多結晶氷の流動則や結晶組織に与える影響、そしてグリーンランド氷床流動の高速化との関連性について議論する。