JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG74] [JJ] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、田阪 美樹(島根大学 )、座長:桑野 修(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

11:30 〜 11:45

[SCG74-10] bruciteの(001)面における真の接触面での摩擦特性

*奥田 花也1河合 研志2佐久間 博3 (1.東京大学理学部地球惑星環境学科、2.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、3.国立研究開発法人物質・材料研究機構)

キーワード:層状鉱物、(001)面、摩擦特性、層間結合エネルギー、第一原理電子状態計算

断層に多く存在する層状鉱物は、断層のすべりを支配すると考えられ、その摩擦特性を考察することは重要である。一般的な鉱物の摩擦係数が0.6-1.0であるのに対して層状鉱物の摩擦係数は0.2-0.4と低い値を持つ(Byerlee 1978; Behnsen and Faulkner 2012)。この弱い摩擦係数は結合力の相対的に弱い(001)面をせん断面に配向することによって支配されていると考えられている(Moore and Lockner 2004)。しかしながら(001)面が低摩擦であるという実験事実は与えられていなかった。そこでKawai et al. (2015)は、白雲母単結晶の(001)面での摩擦試験を行い、白雲母の(001)面の摩擦係数は不定配向試料の半分ほどであり、層状鉱物の低い摩擦係数には、すべり面となる(001)面の摩擦特性が重要であることを示唆した。しかしなぜ(001)面の摩擦係数が小さいのか?についてまだ理解されていない。層状鉱物の摩擦係数はGiese (1978)によって決定された静電的に(001)面の層間の結合エネルギー(Interlayer Bonding Energy, ILBE)に比例すると考えられてきた(Moore and Lockner 2004)が、近年の実験や理論計算によれば鉱物に固有のILBEと摩擦係数に比例関係はほとんど確認されなかった(Behnsen and Faulkner 2012; Sakuma and Suehara 2015; Kawai et al. 2015)。そのため鉱物に固有のILBEに変わる、層状鉱物の摩擦特性を説明する物理過程の理解が望まれている。本研究では、断層中の蛇紋岩に含まれており、かつ単位格子中の原子数が少なく大量の計算を行うのに適しているMgの水酸化物である層状鉱物bruciteの(001)面の真の接触面での摩擦特性を理論的に調べることを試みた。

摩擦時における(001)面間のポテンシャルエネルギー面を第一原理電子状態計算によって求め、Zhong and Tomanek (1989)の手順に従って、(001)面の真の接触面における摩擦特性を調べる。具体的には、bruciteの二層を考え、その中間に存在する(001)面に平行な面をすべり面とし、片方の層をすべり面に対して水平方向及び鉛直方向に微小変化させILBEを計算し微分をとることによって、すべり面における真の接触面における垂直応力とせん断応力を求め、これらの関係からMohr-Coulombの破壊条件を用いて摩擦特性を見積もった。

予察的な結果によれば(001)面での<010>方向のすべりでは内部摩擦角=0.048、粘着力=0.371GPaという結果が得られた。

現在(001)面全面におけるILBEの計算を行っており、bruciteの(001)面の任意のすべり方向における摩擦特性を求め、摩擦特性の方向依存性を議論する。また佐久間ら(2016)や河合ら(2016)で求められている他の層状鉱物(lizardite, talc, pyrophyllite, muscovite)との比較も行い、鉱物間の真の接触面での摩擦特性の違いについて議論を行う。