JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG74] [JJ] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、田阪 美樹(島根大学 )、座長:桑野 修(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

12:00 〜 12:15

[SCG74-12] 断続振動下における粉体対流速度スケーリング

*飯川 直樹1バンディ マヘッシュ2桂木 洋光1 (1.名古屋大学、2.沖縄先端科学技術大学院大学)

キーワード:粉体対流、スケーリング、レゴリス

地上の室内実験で粉体に振動を加えると粒子の対流運動が生じる.この粉体対流と呼ばれる現象は,小惑星イトカワのようなレゴリスで覆われた天体表面においても起きる可能性がある[1,2].そのため最近では,天体表面への応用を考慮し,重力依存性を内包した粉体の対流速度と振動強度の関係式[3]が提案されている.しかし,この関係式は粉体層に定常的な振動を与えた際に求められたものであり,粉体層が静止状態と流動状態を繰り返す,実際の天体表面のような断続振動下での対流速度に関する定量的な議論はこれまで十分になされてこなかった.そこで,本研究では粉体層に断続的な振動(タッピング)を加える実験を行い,その際の粒子の運動を解析することにより,断続振動下の粉体対流速度と振動強度との関係を調べた.
  実験では,大小2種類の大きさ(直径がそれぞれ15 mm と10 mm)の円盤状物質を粉体構成粒子とし,これを重力方向に直立した実験容器内に2次元的に充填した.その後,電磁式加振装置を用いて実験容器に対して鉛直方向のタッピング(一周期の正弦波振動)を2秒間隔ごとに1,000回加えた.加える振動の強さは最大振動加速度と重力加速度の比を表す ΓΓ= A(2πf)2/gA:振動振幅,f: 振動数,g:重力加速度)を用いて Γ= 2.5, 5, 10, 20,そのそれぞれの場合に f = 50, 100, 200 Hz と系統的に変化させ実験を行った.
  解析では,各振動後の粒子配置の変化をスチールカメラによって取得し,粒子追跡法を用いて各粒子の速度を算出した.さらに,各粒子の速度から粒子の集団運動に対する渦度を算出することにより,断続振動下における対流形成を定量的に評価した.そして,対流運動時における粒子の平均速度 v を重力と粒子径が作る特徴速度(gd)1/2 で無次元化した速度v* と,振動と重力のエネルギーバランスを表す無次元パラメーターS = (2πAf)2/gd との間におけるスケーリング関係を求めた.
  その結果,断続振動下においても,外部からの振動によって粉体層内の粒子が運動する場合には,粒子による対流(渦)運動が形成されており,その際のv* S の間のスケーリング関係はv* ~ S0.56 で表されることが分かった(Fig.1).この結果は断続振動下においても対流速度がほぼS1/2 に比例することを示しており,定常振動下における対流速度のスケーリング関係[3]と整合的である.したがって,粉体層に加える振動の断続性が粉体粒子の対流運動に与える影響は小さいと考えられる.


[1] H. Miyamoto et al. , Science 316, 1011 (2007).
[2] T. M. Yamada et al. , Icarus 272, 165 (2016).
[3] T. M. Yamada and H. Katsuragi, Planet. Space Sci. 100, 79 (2014).