14:45 〜 15:00
[SCG74-17] 硬化過程におけるフォームの変形実験 -Tube Pumiceの履歴を探る-
キーワード:チューブパミス、気泡変形、レオロジー
カルデラ形成を伴う破局的な噴火では,tube pumiceと呼ばれる噴出物が多く見つかる.tube pumiceとは軽石の一種であり,一方向に伸長した気泡から構成される.このような特徴的な気泡構造には,カルデラ噴火のダイナミクスに関する記録が残されている可能性があり,その形成機構の解明は重要である.
先行研究では,気泡変形を促進する流動のタイムスケールと,表面張力による形状緩和のタイムスケールの競合を表すCapillary数(Ca=Rη0ε’/Γ)を用いて,tube pumiceの形成機構が論じられてきた.Rは気泡径,η0は液体の粘性率,ε’は歪み速度,Γは表面張力である.定常状態では,Caの大きい時(即ち,流動のタイムスケールが形状緩和のタイスケールよりも短い時),気泡が引き伸ばされる(Rust and Manga, 2002).しかし,Caがせん断変形中の気泡形状を特徴付けることを踏まえると,軽石に保存される気泡形状を特徴付けるのは,この無次元数だけではない.せん断変形の場で気泡が伸びても,流動による応力が取り去られた後に表面張力による形状緩和を受けると,流体が固まらなければ,気泡が球形に戻る.形状緩和による変形量は,硬化のタイムスケールと表面張力による形状緩和のタイムスケールの競合で表されると考え,本研究では,新たにPumice数(Pu=Rη0’/Γ)を提唱する.η0’は液体の粘性率の増加率である.Puが大きい時(即ち,硬化速度が速い時),気泡構造をそのまま軽石に残すと予想される.
Puと保存される気泡形状の関係を調べるため,本研究は,硬化過程におけるポリウレタンフォームの変形実験を行った.この材料は化学反応によって発泡し,時間経過にしたがって硬化する特徴を持つ.まず,内筒回転式のレオメータを使用し,粘性率の変化を計測した(大橋他,火山学会,2016).次に,一定の粘性率に達した時に,規定量のせん断変形を加え,静置させた.硬化後の試料をX線CTスキャンにかけ,画像解析することで,試料に含まれる気泡のサイズ分布や変形度の情報を得ることができる.大きな粘性応力の働く場で大きな歪みを加えた実験では,小さな気泡まで伸びたtube pumice状の構造を得ることが出来た.しかし,画像解析の制約上,この気泡構造から形状データを得ることができなかった.そのため,試料に与える歪みを小さくし,画像解析が可能な範囲内でサイズ分布や変形度を計測した.画像解析の結果,予想通り,Caだけでは硬化後の気泡形状を説明できなかった.一方,Puが大きくなるほど,気泡の変形度が小さくなる傾向が見つかった.この傾向は,Pumice数の定義から予想される傾向とは逆である.
実験結果の定量的な議論をするため,先行研究の気泡変形モデルを拡張し,指数関数的な粘性率上昇を表す項を加えて数値計算を行った.Caとひねり時間を固定し,変形—硬化後の最終変形度のPu依存性を調べた.まず,予想通りPuが大きい場合には,せん断変形後の形状緩和量が減少した.また,非定常状態では,Puが大きくなるほど,気泡が十分に伸びきらなくなることが分かった.発表では,以上の2つの振る舞いを詳細に説明する.
tube pumiceのような気泡構造が残るには,せん断変形終了時点での気泡構造を残す必要があるので,その時点でのPumice数が大きい必要がある.さらに,せん断変形終了時に気泡が伸長しているためには,その直前において,十分に大きいCapillary数の下,大きな歪みが蓄えられなければならない.
先行研究では,気泡変形を促進する流動のタイムスケールと,表面張力による形状緩和のタイムスケールの競合を表すCapillary数(Ca=Rη0ε’/Γ)を用いて,tube pumiceの形成機構が論じられてきた.Rは気泡径,η0は液体の粘性率,ε’は歪み速度,Γは表面張力である.定常状態では,Caの大きい時(即ち,流動のタイムスケールが形状緩和のタイスケールよりも短い時),気泡が引き伸ばされる(Rust and Manga, 2002).しかし,Caがせん断変形中の気泡形状を特徴付けることを踏まえると,軽石に保存される気泡形状を特徴付けるのは,この無次元数だけではない.せん断変形の場で気泡が伸びても,流動による応力が取り去られた後に表面張力による形状緩和を受けると,流体が固まらなければ,気泡が球形に戻る.形状緩和による変形量は,硬化のタイムスケールと表面張力による形状緩和のタイムスケールの競合で表されると考え,本研究では,新たにPumice数(Pu=Rη0’/Γ)を提唱する.η0’は液体の粘性率の増加率である.Puが大きい時(即ち,硬化速度が速い時),気泡構造をそのまま軽石に残すと予想される.
Puと保存される気泡形状の関係を調べるため,本研究は,硬化過程におけるポリウレタンフォームの変形実験を行った.この材料は化学反応によって発泡し,時間経過にしたがって硬化する特徴を持つ.まず,内筒回転式のレオメータを使用し,粘性率の変化を計測した(大橋他,火山学会,2016).次に,一定の粘性率に達した時に,規定量のせん断変形を加え,静置させた.硬化後の試料をX線CTスキャンにかけ,画像解析することで,試料に含まれる気泡のサイズ分布や変形度の情報を得ることができる.大きな粘性応力の働く場で大きな歪みを加えた実験では,小さな気泡まで伸びたtube pumice状の構造を得ることが出来た.しかし,画像解析の制約上,この気泡構造から形状データを得ることができなかった.そのため,試料に与える歪みを小さくし,画像解析が可能な範囲内でサイズ分布や変形度を計測した.画像解析の結果,予想通り,Caだけでは硬化後の気泡形状を説明できなかった.一方,Puが大きくなるほど,気泡の変形度が小さくなる傾向が見つかった.この傾向は,Pumice数の定義から予想される傾向とは逆である.
実験結果の定量的な議論をするため,先行研究の気泡変形モデルを拡張し,指数関数的な粘性率上昇を表す項を加えて数値計算を行った.Caとひねり時間を固定し,変形—硬化後の最終変形度のPu依存性を調べた.まず,予想通りPuが大きい場合には,せん断変形後の形状緩和量が減少した.また,非定常状態では,Puが大きくなるほど,気泡が十分に伸びきらなくなることが分かった.発表では,以上の2つの振る舞いを詳細に説明する.
tube pumiceのような気泡構造が残るには,せん断変形終了時点での気泡構造を残す必要があるので,その時点でのPumice数が大きい必要がある.さらに,せん断変形終了時に気泡が伸長しているためには,その直前において,十分に大きいCapillary数の下,大きな歪みが蓄えられなければならない.