JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG74] [JJ] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、田阪 美樹(島根大学 )

[SCG74-P10] 中–高速条件下におけるRSF則パラメターのすべり速度・温度に対する依存性

*中野 龍二1堤 昭人1 (1.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:摩擦、速度状態依存摩擦構成則、中–高速、温度

1. はじめに
摩擦抵抗の挙動はその面でのすべり速度によって異なるということが知られている.低速度域(<10-3 ms-1)では摩擦係数の定常値はほぼ0.6から0.85の間におさまる[Byerlee, 1978]が,中速度域(10-3 < v < 10-1 ms-1)では定常摩擦抵抗は速度弱化・強化の両方を示し,高速度域(>10-1 ms-1)では非常に大きい速度弱化の傾向を示す.この弱化・強化の原因として,摩擦発熱による温度の効果が考えられる.より良い地震予測を行うためには,これらの効果を考慮したモデルを使用したシミュレーションを行うことが必要とされるが,現状の摩擦構成則ではこれらの効果を十分に説明することはできない.
最も有益な摩擦構成則のひとつに,Dieterich [1979]やRuina [1983]によって発展させられた速度状態依存摩擦構成則(RSF law)がある.これは元々低速域での摩擦挙動を説明するために記述されたものであり,この構成則が中–高速度域においても適用可能かどうかは未だ明らかになっていない.加えて,先述のように,摩擦挙動はすべり速度だけではなく温度にも依存するため,RSF則と温度との関係性についても明らかにする必要がある.
本研究では,中–速度域での摩擦実験を行い,摩擦表面での温度の変動を考慮しつつ,その結果からRSF則のパラメターの推定を行った.

2. 方法
実験には京都大学の中–高速剪断摩擦試験機を使用し,室温,室内湿度条件下で1.5 MPaの垂直応力をかけつつ速度急変実験を行った.試料にはジンバブエ産の斑レイ岩を内径26 mm,外径40 mmの円筒形に加工したものを1対使用した.なお,今回の実験はガウジを試料間に挟み込まずに行った.また,速度急変実験を行うにあたって,IRPMとΔRPMの2つの設定値を定義した.IRPMは急変前の試験機内のモータ回転速度を表し,10,20,50,100 RPMの値をそれぞれ設定した.ΔRPMは急変量を表し,80,150,200,300,400 RPMの値をそれぞれ設定した.実験は各IRPM・ΔRPMの全組み合わせを行ったが,初期温度をそろえるため,次の組み合わせを行うのは前の組み合わせが終了し,試料面温度が室温にまで冷めてからとした.
RSF則の各パラメターは,準静的なバネ・ブロックモデルを仮定し,Sakamoto et al. [2005]によって改良されたLevenberg-Marquardt法を用いて推定を行った.摩擦表面での温度は,黒田[2005]の有限要素法を用いて計算を行った.

3. 結果
摩擦実験の結果は以下の通りである.(1) 摩擦係数の定常値はすべり速度が大きくなるにつれて減少する様子が確認された.これは,Tsutsumi and Shimamoto [1997]の結果と矛盾しない.(2) IRPMとΔRPMの組み合わせが100と400の時に摩擦溶融が確認され,溶融面が発達する間大きなすべり強化が見られた.このことは,Hirose and Shimamoto [2005]の,溶融面形成の始まりは断層でのすべりを妨げる機構となり得るという主張と矛盾しない.
また,RSF則のパラメターについては,すべり速度によるものと温度によるもので似た傾向が確認された.すなわち,すべり速度(あるいは温度)が上がるにつれて各パラメターの値は線型的に増加した.この傾向は,Nakatani [2001]やNakatani and Scholz [2004]による,RSF則のパラメターaとbは絶対温度に比例するという主張と矛盾しない.ただし,今回の実験ではすべり速度が上がるにつれて摩擦表面での温度が上がってしまうため,両者のRSF則のパラメターに対する依存性については厳密には議論できていない.したがって,両者の依存性を区別して考えられるような実験を行うことが今後必要とされる.