14:00 〜 14:15
[SCG75-02] 鹿塩地域に湧出する塩水を用いた深部および浅部端成分の地球化学的探索
日本に湧出する温泉は主にその水の酸素・水素同位体比から,グリーンタフ型・海岸温泉型・火山性型・有馬型の4つに分類されている。このうち有馬型の温泉水は地下深部の塩水と天水との混合で形成されていると考えられているが,深部塩水そのものの組成ははっきり分かっておらず,深部塩水の起源についてもマグマ水説・スラブ水説という2つの仮説が対立している。深部塩水の組成を明らかにし有馬型温泉の起源に迫ることは,温泉学における重要な目標である。本研究では,有馬型温泉の一つに分類されている,長野県南部の中央構造線近傍に湧出する鹿塩(かしお)温泉において温泉水の採取を行い,水の酸素水素同位体比・Cl-濃度・HCO3-濃度・3H濃度・溶存希ガスの濃度と同位体比の値の季節変動を利用して,混合系の解析と深部塩水の端成分を推定することを試みた。分析の結果,鹿塩温泉は深部塩水と天水起源の若い地下水との2成分混合で説明できることが分かり,トリチウム濃度を利用することで,深部塩水の端成分としてδ18O: -1‰,δD: -49‰,Cl-: 25000 mg/Lという推定値が得られた。深部塩水の同位体組成はマグマ水では説明することができず,沈み込んだスラブから脱水・上昇した水が地殻内で鉱物と同位体交換を起こした結果として解釈されうる。また深部塩水のCl濃度推定値と河川調査の結果から,鹿塩における深部塩水のフラックスは0.63L/secと見積もられる。この値は有馬温泉や神戸地域での値とそれほど変わらない結果となった。