JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM19] [JJ] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山崎 健一(京都大学防災研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、座長:山﨑 健一(京都大学防災研究所)、座長:畑 真紀(産業技術総合研究所)

11:30 〜 11:45

[SEM19-09] 地熱地域岩石コアの室内透水試験における電気インピーダンス測定

*澤山 和貴1北村 圭吾2藤光 康宏3 (1.九州大学大学院工学府地球資源システム工学専攻、2.九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、3.九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

キーワード:電気インピーダンス、弾性波速度、水飽和度、透水試験、EGS(地熱涵養系)

地熱資源の持続的な利用を可能にするためには,枯渇した地熱貯留層への人工涵養法(Enhanced Geothermal System; EGS)の開発が不可欠である.このEGSを行う上では,地下深部の貯留層における熱水飽和度の推定が極めて重要であり,近年,Magnetotelluric (MT)法を用いた比抵抗構造探査の適用が注目されている。MT法では,低周波数帯域のインピーダンス特性を調べることで地下深部の情報を得ることができるが,電気インピーダンスと水飽和度の相関を調べた研究は少ない。本研究では,地熱貯留層を構成する岩石の水飽和度と電気インピーダンスの関係を実験的手法によって明らかにすることを目的とし,岩石コアの室内透水試験を行った。サンプルは,人工的に亀裂を生成した安山岩(牧園溶岩,空隙率11%)の円柱コア(直径35 mm, 長さ70 mm)を用い,封圧20 MPa,温度25 ℃の条件下で透水試験を行った。このサンプルにリボン状のAg-AgCl電極と圧電素子をとりつけることで,透水試験中の電気インピーダンス(測定周波数10-2-105 Hz)と弾性波速度を測定している。実験は,はじめに過熱蒸気を模擬した窒素ガス(間隙圧10 MPa)で空隙を充填させたのち,模擬地層水(1wt-% KCl溶液,電気伝導度1.75 S/m)を一定圧力(11, 12, 14, 16, 18 MPa)で注入した。この空隙の窒素—塩水置換によって水飽和度を変化させている。安山岩を用いて実験を行った結果,塩水注入前の電気インピーダンスは105 Ωのオーダーであったのに対し,注入後の電気インピーダンスは103 Ωのオーダーと2桁ほど減少した。この顕著な電気インピーダンスの減少は,岩石中にあらかじめ注入していた窒素ガスが,注入した塩水によって置換されたためであると考えられる。また,注入圧力の上昇に伴い,電気インピーダンスには系統的な減少が確認され,注入水圧が18MPaのときでは,11MPaのときに比べて40%ほど減少した。注入水圧をステップ上昇させて増圧過程を調べた後,注入水圧を下降させていく減圧過程においても同様の測定を行った。その結果,減圧過程のときの電気インピーダンスは,増圧過程における同じ注入水圧のものに比べやや小さい傾向にあり,注入水圧が11 MPaのときでは27%ほどの減少が確認された。一方で,同時に測定していたP波速度は,注入水圧の変化によってほとんど変化しなかった。これは,減圧過程の微小な水飽和度の変化に対して,電気インピーダンスは敏感に反応したが,P波速度ではこの変化を感知できなかったことを示している。これらの結果から,電気インピーダンスは,P波速度に比べて微細な水飽和度の変化に対する感度が高いことが明らかになった。このことは,地熱貯留層における緩やかな水飽和度の変化が,電気インピーダンスによってモニタリング出来る可能性を示唆している。