JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM19] [JJ] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山崎 健一(京都大学防災研究所)、宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

[SEM19-P11] 最近15年間の日本の地磁気全磁力の局所的変化と地殻活動の関連

*山崎 健一1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:地磁気、経年変化、局所的変化、地殻活動、主成分分析

地磁気変化には、地殻に起源をもつ成分が含まれているといわれている。その成因は温度変化や応力変化による岩石磁化の変化であるので、地殻起源の地磁気変化を調べることは、地殻内部で進む物理現象を理解する助けになるはずである。しかし、地殻活動に起因する地磁気変化を調べることは一般に難しい。それは、地殻活動に起因する地磁気変化の大きさが高々数nT程度であり、小さいからである。地球深部から生じる時間スケールの長い変化および超高層から生じる時間スケールの短い変化は、いずれも地殻活動に起因する地磁気変化よりも圧倒的に大きい。地殻変動に起因する地磁気変化を調べるには、高い精度で他の変化成分を観測値から分離する必要がある。

地殻活動に起因する地磁気変化と他の要因から生じる地磁気変化から分離する際のよりどころとなるのは、空間スケールの違いである。地球深部から生じる時間スケールの長い変化および超高層から生じる時間スケールの短い変化は、いずれも数千キロあるいはそれ以上の大きな空間スケールを持つ。一方、地殻起源の変動は、ほとんどの場合、発生源の近傍に限定されると考えられている。 そのため、空間スケールの大きな変動のみを何らかの方法で表現できれば、その表現と観測値の差に表れる変化は地殻起源であると期待できる。

本研究では、主成分分析を用いて地磁気の局所変化の抽出を試みた。これは、過去のデータについてこれまでに試みられている方法(たとえば Fujiwara et al. 2001; Yamazaki & Oshiman 2006; Yamazaki & Sakanaka 2011)と同じである。用いたデータは、国土地理院および気象庁によって観測・公開されている日本の17点の地磁気全磁力連続観測記録(確定値)であり、期間は1999年1月から2014年12月までである。具体的な方法は以下のとおりである。 まず、目視で明らかに判断できる異常値やとびを補正したのち、各観測点での日平均値時系列を算出した。つぎに、主成分分析により、各時系列を、多数の点に共通する磁化変化のパターン(共通時間関数)と、観測点ごとに決まるそれらの重み(離散的空間関数)の積の和で表現する。もとの時間変化関数と離散的空間関数をすべてそのまま使えば、当然もとの時系列が完全に再現される。それに対して、対応する離散的空間関数の値が小さい時間変化関数を無視すれば、限られた観測点のみに現れる局所的変化が除去される。また、関数離散的空間関数を滑らかな連続関数で近似したもの(連続的空間関数)に置き換えれば、空間スケールの大きな変化のみを取り出すことができる。こうして、一部の時間変化関数とそれに対応する連続的空間関数だけを用いて各観測点での地磁気変化を表現すれば、空間スケールの大きな変化、すなわち地球深部や超高層から生じる変化成分が記述されると期待できる。

得られる結果は、時間変化関数のうちのいくつを用いるか、あるいは連続空間関数としてどんな関数形を用いるかによって変化しうる。そこで、結果の信頼度、すなわちどの程度の精度で局所的地磁気変化のみが抽出されているかについての検討を行った。そのうえで、同時期の地殻活動との比較を行った。

現時点では、抽出された局所的変化と地殻活動との明確な関係は認められていない。