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[SEM20-01] 西南日本の古地磁気偏角は日本海拡大時のコヒーレント時計回り回転が原因か?
キーワード:古地磁気偏角、日本海拡大、西南日本、地質構造、ブロック回転
岩石試料の古地磁気偏角は大規模造構ドメインの一体回転から,断層で区切られた小地塊のブロック回転,横ずれ運動による剪断変形など,さまざまなスケールとモードの水平回転によって生じうる.古地磁気偏角の原因を推定するには,断層や褶曲軸の方向など地質構造に基づく考察が必要である.
西南日本で観察される東向き古地磁気偏角は,日本海拡大についてのいわゆる観音開きモデルの重要な証拠と見なされている(Otofuji, 1996).しかし,古地磁気偏角をもたらした回転スケールについての地質学的裏付けが不十分である.観音開き説では西南日本古生統を韓半島沃川帯の延長と見なすが,この対比が不適切であることはMatsumoto (1967)や市川(1972)によってすでに指摘されている.さらに観音開き説は北部九州と近隣造構区の地質学的関係に矛盾する.北部九州背振山地の白亜紀花崗岩と韓半島南東部白亜系にはNNE-SSW断層が卓越しており,北部九州が韓半島に対して相対水平回転を行ったことを示さない.また古第三系北部九州堆積盆と東シナ海陸棚堆積盆には共通してNNW-SSE~NW-SE断層が発達しており,北部九州は東シナ海に対して有意な相対水平回転を行ったと考えるもの困難である.北東九州から西中国地方に分布する先白亜系にはENE-WSW褶曲や断層が発達しており,北部九州が西中国地方に対して水平回転を行ったと考えるのも困難である.
これらの地質学的証拠から西南日本の東向き古地磁気偏角の原因は,西南日本の一体回転ではなく,断層で区切られた小地塊のブロック回転と見なさざるを得ない.古地磁気偏角量が西中国地方から北西九州へむけて減少することと(Ishikawa, 1997)沈み込むフィリピン海プレートの形状から,このブロック回転の原因は上盤西南日本と下盤四国海盆の力学的相互作用が原因であったと推定される.
西南日本で観察される東向き古地磁気偏角は,日本海拡大についてのいわゆる観音開きモデルの重要な証拠と見なされている(Otofuji, 1996).しかし,古地磁気偏角をもたらした回転スケールについての地質学的裏付けが不十分である.観音開き説では西南日本古生統を韓半島沃川帯の延長と見なすが,この対比が不適切であることはMatsumoto (1967)や市川(1972)によってすでに指摘されている.さらに観音開き説は北部九州と近隣造構区の地質学的関係に矛盾する.北部九州背振山地の白亜紀花崗岩と韓半島南東部白亜系にはNNE-SSW断層が卓越しており,北部九州が韓半島に対して相対水平回転を行ったことを示さない.また古第三系北部九州堆積盆と東シナ海陸棚堆積盆には共通してNNW-SSE~NW-SE断層が発達しており,北部九州は東シナ海に対して有意な相対水平回転を行ったと考えるもの困難である.北東九州から西中国地方に分布する先白亜系にはENE-WSW褶曲や断層が発達しており,北部九州が西中国地方に対して水平回転を行ったと考えるのも困難である.
これらの地質学的証拠から西南日本の東向き古地磁気偏角の原因は,西南日本の一体回転ではなく,断層で区切られた小地塊のブロック回転と見なさざるを得ない.古地磁気偏角量が西中国地方から北西九州へむけて減少することと(Ishikawa, 1997)沈み込むフィリピン海プレートの形状から,このブロック回転の原因は上盤西南日本と下盤四国海盆の力学的相互作用が原因であったと推定される.