11:30 〜 11:45
[SEM20-10] 反磁性物質および常磁性物質の磁気分離
キーワード:磁気分離、一般の常磁性粒子、微小重力、反磁性粒子
固体粒子の磁気分離は、これまで強磁性、フェリ磁性および一強い常磁性物質のみに用いられてきた。磁気分離は粒子内に発生する磁気的ポテンシャルによって引き起こされるが、このポテンシャル自体は、反磁性体や常磁性体においても、磁気天秤などの測定で、古くから利用されてきた。磁場勾配が存在する微小重力空間に開放された固体粒子は、その磁性によらず、並進することが近年報告され.その速度は(磁場空間が共通の場合)、物質固有の磁化率のみに依存することが確認された[1][2]。同じ原理を用いて、今回、種類の異なる粒子の集団を磁気分離できることを確認したので、その結果を報告する[3]。
分離の前提となる微小重力は、小型の落下ボックス(30×30×20cm)を、長さ1.8mのシャフト内で落下して発生させた(微小重力継続時間<0.5秒)。上記のボックス内には、ネオジム磁石製の磁気回路(磁場強度<0.8T)、試料および磁気回路を収容するガラス製真空容器(内圧<100 Pa),照明器具およびハイスピードカメラを配置し、微小重力時間内の粒子の運動を録画した.上記の磁気回路は、一方向に単調減少する磁場空間を発生するので、その中の一点に、前述の粒子集団をセットした。その結果、微小重力発生直後に、反磁性鉱物は磁場の外へ並進し,一方、常磁性粒子は磁場中心方向に並進した。その後、これらの粒子は、それぞれの方向にセットした 2枚の回収板の上に、物質ごとに異なる粒子群として回収された(YouTube: Magnetic separation of general solid particles realized by a permanent magnet参照)。
x軸方向に単調に変化する磁場空間において、質量m (g)の粒子には、ma = mXB(x)[dB(x)/d(x) の運動方程式に従う並進運動が発生するが、共通の磁場空間の中では、その加速度aは質量mに依存せず、物質固有の磁化率X (emu/g)のみに依存する[1]。今回、観測した粒子の加速度からそのX値が得られ、それらは全て文献値と一致した.これにより観測された分離が、上記の方程式に従って進行することが確認された[3].今回の実験で現存する反磁性体および常磁性体により,固体全体で磁気分離が実現する展望が得られた。物質科学の諸分野では、異種粒子の混合体を対象とする事が多いが、今回の分離技術はその分析の前処理過程として利用できる。一方で、宇宙・地球の諸領域に遍在する磁場勾配によって、その領域に多数存在する固体粒子が物質分離する可能性も、現時点では排除できない[3] .
References
[1] K. Hisayoshi, S. Kanou and C. Uyeda : Phys.:Conf. Ser., 156 (2009) 012021.
[2] C. Uyeda, K. Hisayoshi, and S. Kanou : Jpn. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 064709.
[3] K. Hisayoshi, C. Uyeda and K. Terada : Sci. Rep. (Nature Pub) 6 (2016) 38431
分離の前提となる微小重力は、小型の落下ボックス(30×30×20cm)を、長さ1.8mのシャフト内で落下して発生させた(微小重力継続時間<0.5秒)。上記のボックス内には、ネオジム磁石製の磁気回路(磁場強度<0.8T)、試料および磁気回路を収容するガラス製真空容器(内圧<100 Pa),照明器具およびハイスピードカメラを配置し、微小重力時間内の粒子の運動を録画した.上記の磁気回路は、一方向に単調減少する磁場空間を発生するので、その中の一点に、前述の粒子集団をセットした。その結果、微小重力発生直後に、反磁性鉱物は磁場の外へ並進し,一方、常磁性粒子は磁場中心方向に並進した。その後、これらの粒子は、それぞれの方向にセットした 2枚の回収板の上に、物質ごとに異なる粒子群として回収された(YouTube: Magnetic separation of general solid particles realized by a permanent magnet参照)。
x軸方向に単調に変化する磁場空間において、質量m (g)の粒子には、ma = mXB(x)[dB(x)/d(x) の運動方程式に従う並進運動が発生するが、共通の磁場空間の中では、その加速度aは質量mに依存せず、物質固有の磁化率X (emu/g)のみに依存する[1]。今回、観測した粒子の加速度からそのX値が得られ、それらは全て文献値と一致した.これにより観測された分離が、上記の方程式に従って進行することが確認された[3].今回の実験で現存する反磁性体および常磁性体により,固体全体で磁気分離が実現する展望が得られた。物質科学の諸分野では、異種粒子の混合体を対象とする事が多いが、今回の分離技術はその分析の前処理過程として利用できる。一方で、宇宙・地球の諸領域に遍在する磁場勾配によって、その領域に多数存在する固体粒子が物質分離する可能性も、現時点では排除できない[3] .
References
[1] K. Hisayoshi, S. Kanou and C. Uyeda : Phys.:Conf. Ser., 156 (2009) 012021.
[2] C. Uyeda, K. Hisayoshi, and S. Kanou : Jpn. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 064709.
[3] K. Hisayoshi, C. Uyeda and K. Terada : Sci. Rep. (Nature Pub) 6 (2016) 38431