JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM20] [JJ] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:菅沼 悠介(国立極地研究所)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)

12:00 〜 12:15

[SEM20-12] 堆積物の化学リーチングによる磁性鉱物インクルージョンの環境磁気分析

*臼井 洋一1山崎 俊嗣2,1下野 貴也3 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学大気海洋研究所、3.明治大学 研究・知財戦略機構 ガスハイドレート研究所)

キーワード:環境磁気学、磁性鉱物インクルージョン、風成塵

堆積物の化学リーチングは、堆積物から起源の異なる様々な成分(例えば風成塵、火山性粒子、生物源粒子、自生鉱物など)を分離する有効な方法である。しかし、化学処理は磁性鉱物にも影響するため、環境磁気学分野ではあまり用いられていない。近年、ケイ酸塩鉱物中の磁性鉱物インクルージョンの磁気測定が広く行われるようになっており、堆積物中のそうした鉱物の存在も改めて注目されてきている。磁性鉱物インクルージョンはケイ酸塩鉱物に保護されているため、強力な化学処理にも耐えうると考えられる。そこで我々は、堆積物から石英・長石だけを化学的に分離し岩石磁気測定を行った。用いた試料は南鳥島付近で採取された遠洋性赤色粘土である。未処理堆積物中の主要な磁性鉱物は、生物源磁鉄鉱とマグヘマイト化した磁鉄鉱である。また、南鳥島の位置から、石英は中国からの風成塵であり、長石は中国ないし伊豆―マリアナ孤からの風成塵であると考えられる。
 分離した石英・長石の飽和等温残留磁化は10-4 Am2/kg程度であった。これは未処理堆積物の飽和等温残留磁化の1-5 % 程度に相当し、超電導磁力計やMPMSの感度内に十分に収まる。一方で、交番力磁力計によるヒステリシス測定は、長石からの常磁性シグナルが相対的に大きく困難であった。飽和等温残留磁化の熱消磁および低温磁気特性から、石英・長石は、化学的にほぼ純粋な磁鉄鉱を伴っていることが分かった。これは、未処理堆積物に見られたマグヘマイト化した磁鉄鉱とは明確に異なる。純粋な磁鉄鉱が長石からの離溶で生じているかを検証するために、さらにH2SiO6 処理を行い、石英だけを分離した。予察的な測定では、石英もやはり純粋な磁鉄鉱を含んでおり、離溶磁鉄鉱ではなさそうである。これらの結果から、化学リーチングが磁性鉱物インクルージョンの分離に有用であることが確かめられた。さらに、純粋な磁鉄鉱インクルージョンが、中国からの風成塵の特徴である可能性が示唆される。