JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM20] [JJ] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:菅沼 悠介(国立極地研究所)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)

[SEM20-P07] 高知県西部の露頭から採取した降下火山灰を構成する粒子の岩石磁気特性

*武田 大海1山本 裕二2佐藤 雅彦3 (1.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

日本周辺には数多くの広域テフラが分布する。従来の古地磁気・岩石磁気学的研究においては、テフラを構成する粒子群が集合体として獲得しているマクロな残留磁化を主な分析対象としてきているが、私たちは個々の粒子が獲得した残留磁化が分析対象になり得るか検討を進めている。武田ほか(日本地球惑星科学連合2016年大会、地球電磁気・地球惑星圏学会2016年秋学会)では、宮崎県の入戸火砕流堆積物(A-Ito)の非溶結部の露頭から採取した試料から20~30メッシュサイズ(595~841μm)の粒子を抽出し、各種の古地磁気・岩石磁気学的分析を行った。とくに抽出した粒子のうち、軽石型火山ガラス粒子は27%が超伝導磁力計のブランクの10倍を上回る強い安定な自然残留磁化(NRM)を保持しており、それらの磁化は保磁力の高い単磁区サイズのマグネタイトによって担われていることが示された。これらの粒子は噴出時に熱的なプロセスによって熱残留磁化(TRM)を獲得している可能性が示され、予察的ながらも20~30μTという古地磁気強度の推定値を得た。

 本研究では、高知県西部の露頭から採取した姶良Tnテフラ(AT)と推測される降下火山灰の試料から篩分けを行い、20~30メッシュ(595~841μm)サイズの粒子を抽出して古地磁気・岩石磁気学的分析を行う。これまでに軽石型火山ガラス粒子を159個拾い出し、NRMを測定した。約30%の粒子はブランク平均(10 pAm2)に比して3~9倍程度強いNRM強度を保持していることが分かった。そのうち6個の粒子に対して段階交流消磁を行ったところ、全ての粒子が不安定な消磁の挙動を示した。非履歴性残留磁化(ARM)を着磁し、段階交流消磁を行ったが、やはり不安定な消磁の挙動を示した。一方、等温残留磁化(IRM)を着磁し、低温消磁を行ったところ30~40%が消磁された。低温消磁後の試料を用いて段階交流消磁を行ったところ、10 mT程度で残留磁化が50%消磁される成分が確認されたため、主要な残留磁化のキャリアーは多磁区的な磁性粒子と考えられる。これらの挙動は、宮崎県のA-Itoから抽出した20~30メッシュサイズの軽石型火山ガラス粒子の岩石磁気特性とは異なる。