JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM20] [JJ] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:菅沼 悠介(国立極地研究所)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)

[SEM20-P11] 古地磁気学的手法による富士火山の歴史時代噴火の再検討

*馬場 章1金丸 龍夫2吉本 充宏1 (1.山梨県富士山科学研究所、2.日本大学文理学部地球科学科)

キーワード:富士火山、歴史時代噴火、年代推定

火山噴出物の年代推定手法として,層位層相,放射性炭素年代法(14C),古文書の解読,そして古地磁気学的手法がある.富士火山の活動史は,K-Ah(7.3ka),Kg(3.4ka),Iz-Kt(AD838)などの指標テフラを時間軸とした火山灰層序と14C年代から推定され,富士火山地質図(第2版)(高田ほか,2016)にまとめられている.一方で, 14C年代と古文書の解読から推定された年代が相違している噴出物も認められる.そこで我々は,溶岩や火山噴出物などの古地磁気方位と地磁気永年変化モデルJRFM2K.1 (Hatakeyama et al.,2012)から噴火年代を推定することを目的とした.これまでに得られた歴史時代噴火(AD781年以降)の測定結果について報告する.
 富士火山地質図(第2版)の層序区分に基づき,富士山山麓域に分布する溶岩,火砕丘32層を定方位サンプリングした.正確な古地磁気方位を得るために,同層準の溶岩でも数km離れた2~5地点,1地点あたり6~12試料を定方位サンプリングし,交流消磁装置・スピナー磁力計を用いて岩石磁気を測定した.溶岩や火山帯が及ぼす局所的な磁気以上の影響を排除するため,試料の方位付けにはサンコンパスを用いた .
 富士山の歴史時代噴火は,信頼性の高い史料に10回の噴火が記述されている(小山,2007).その中でも宝永4(AD1,707)年,承平7(AD937)年,貞観6~7(AD864~866)年,延暦19~21(AD800~802)年の4回の噴火は,史料の記述内容と火山噴出物の分布・噴火推移から対比が行われている.宝永第一火口内の火砕丘は,偏角3.2度,伏角42.2度を示し,永年変化モデルから計算されるAD1,707年の偏角4.1度,伏角42.7度にα95の範囲内で一致している.AD937年と推定されている剣丸尾第一溶岩と不動沢溶岩の古地磁気方位はα95の範囲内で重複し,14C年代値と調和的なAD1,000~1030年頃に同時噴火した可能性が示唆される.一方で,AD864~866年と推定される青木ヶ原丸尾溶岩は偏角-13.5度,伏角44.1度を示し,永年変化曲線AD800年からAD900年の期待値と異なる古地磁気方位が得られた.この相違の原因は現在検討中である. AD800~802年と推定されている鷹丸尾溶岩は,偏角-16.8度,伏角56.6度を示し,AD600~640年頃に噴火したと推定される.古地磁気学的手法によって,これまでの火山活動史とは異なる年代観が示唆される.