16:15 〜 16:30
[SGC54-10] 放射性炭素を用いた海洋生態系情報の取得
キーワード:放射性炭素、海洋生態系、加速器質量分析
放射性炭素(14C)分析の応用は多岐にわたるが、その中で一番身近な利用は放射性炭素年代測定である。現在から約五万年前までの期間において、数十年程度の精度で年代測定ができる。その特徴を用いて、地球科学や考古学分野での応用が盛んに行われている。
また、放射性炭素分析の応用として、今後発展が期待されるのが、海洋トレーサーとしての利用である。日本近海では、熱塩循環により、いわゆる古い海水が供給される親潮と新しい海水である黒潮系の海流が交わっている。一次生産者の14C濃度は海水のそれを反映しているため、14Cはそれらを捕食する魚類等の回遊履歴のユニークなトレーサーになることが期待される。しかしながら、14Cの分析は大がかりな加速器質量分析装置を利用する必要があるため、高額な測定コスト等も障害となり応用されてこなった。
東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析センターの加速器質量分析計(YSAMS)は、2010年度から導入計画を始め、2013年春に装置導入、2013年夏より定常測定を開始した。その後の現在までの3年間におよそ9000試料程度(標準試料及びテスト試料含む)の測定をこなしてきた。本装置は国内で初導入となるシングルステージ加速器質量分析計であり、同装置の特徴としては、 加速器質量分析計としては小型であること、加速電圧が250kvと低いため、絶縁ガス中に設置する必要がないなどの、従来機に比べた優位性があり、メンテナンス性も従来の大型の加速器質量分析計に比べて向上している。装置の設計測定精度も14C/12C比測定0.3%以下、13C/12C比測定0.3%以下と非常に高い。測定限界も14C/12C≦2.5×10-15と従来機に比べ2倍程度高いものの十分な性能を有している。
高精度測定、容易なメンテナンス性は、分析に試料数を必要するためにいままで十分に活用されてこなかった14Cの生態系解析等の分野への応用展開を切り開くものである。 本発表では同分析装置を用いた海洋生物の移動履歴の解明の研究例を紹介する。
また、放射性炭素分析の応用として、今後発展が期待されるのが、海洋トレーサーとしての利用である。日本近海では、熱塩循環により、いわゆる古い海水が供給される親潮と新しい海水である黒潮系の海流が交わっている。一次生産者の14C濃度は海水のそれを反映しているため、14Cはそれらを捕食する魚類等の回遊履歴のユニークなトレーサーになることが期待される。しかしながら、14Cの分析は大がかりな加速器質量分析装置を利用する必要があるため、高額な測定コスト等も障害となり応用されてこなった。
東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析センターの加速器質量分析計(YSAMS)は、2010年度から導入計画を始め、2013年春に装置導入、2013年夏より定常測定を開始した。その後の現在までの3年間におよそ9000試料程度(標準試料及びテスト試料含む)の測定をこなしてきた。本装置は国内で初導入となるシングルステージ加速器質量分析計であり、同装置の特徴としては、 加速器質量分析計としては小型であること、加速電圧が250kvと低いため、絶縁ガス中に設置する必要がないなどの、従来機に比べた優位性があり、メンテナンス性も従来の大型の加速器質量分析計に比べて向上している。装置の設計測定精度も14C/12C比測定0.3%以下、13C/12C比測定0.3%以下と非常に高い。測定限界も14C/12C≦2.5×10-15と従来機に比べ2倍程度高いものの十分な性能を有している。
高精度測定、容易なメンテナンス性は、分析に試料数を必要するためにいままで十分に活用されてこなかった14Cの生態系解析等の分野への応用展開を切り開くものである。 本発表では同分析装置を用いた海洋生物の移動履歴の解明の研究例を紹介する。