JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] [EJ] 重力・ジオイド

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山本 圭香(国立天文台)、宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)、座長:宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)、座長:田中 俊行(公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

09:15 〜 09:30

[SGD02-02] 重力衛星で見る日本海の海水質量変動:GNSS局位置季節変化との比較

*道藤 俊1日置 幸介1 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)

キーワード:GRACE、海水質量変動、日本海、地殻変動、GNSS

重力衛星GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)はNASAにより2002年に打ち上げられてから15年が経った。これまで多くの研究対象域は陸域に集中したが、信号が小さい海域での重力変動も徐々に捉えられるようになってきた。例えば紅海では、GRACEの観測結果を、衛星搭載海面高度計や海水温度、塩分濃度の現地観測のデータと比較することによって、紅海南端の海峡を通じた海水の出入りによって海水量の季節変化が生じていることが、Wahr et al. (2014)により報告されている。我々も、2002年から2016年までのデータを用いて、世界中の重力変動に解析したところ、北極海やハドソン湾、アラフラ海、日本海において有意な季節変動が生じていることを確認することができた。本研究では、昨年秋の測地学会に続いて日本海に着目した。
 重力変動解析に使用したデータはテキサス大学CSRのRelease5のLevel2データである。Stokes係数データの次数と位数を時系列解析してまとめたファイル(GSM file)を用い、重力変化を水位の変化に換算したものを各月の図として作成した。この際、縦縞フィルターとガウシアンフィルター(平均半径300km)を用いた。昨年秋の学会ではGSM fileを直接解析していたが、実際には観測された重力変化から大気海洋に起因する重力変化をモデル化したGAD fileと呼ばれるStokes係数データがすでに差し引かれている。そこで今回は、GADを足し戻す(add back)ことにより、本来の観測データに近いものを解析した。
昨年の報告では、日本海の重力は11月頃最大、6月頃に最小となった。その重力差は水に換算して約10cmであったが、GSM+GADを用いた解析では10月に最大、2月に最小、その重力差は水換算で4cmとかなり小さくなった(図1)。本来GADモデルは海洋の重力変化を、モデルを用いて予め差し引いておくことを目的としているため、GSM+GADで振幅はGSM単独のときより大きくなるのが普通である。しかし日本海では逆になっており、GRACEの解析チームが用いている海洋の非潮汐性の質量季節変化のモデルが実際の変動と正反対になっていることを意味する。
 また、国土地理院から公開されている月平均潮位データを用いて、日本海にある飛島(山形県)と奥尻島(北海道)の潮位の平均的な季節変化を求め、GRACEと共にプロットした。験潮はGRACEに比べて5倍程度の振幅と、異なるピーク時期(8−9月に最大潮位)を見せる。これは験潮が表す潮位変化の多くは海水量の変化を反映しているのではなく、主に温度躍層より上層の暖水の熱膨張を反映していることを示唆する。
また東北日本陸域では冬期の積雪による重力変化が見られるが、重力が最大となる月は2月から3月にかけてであり、日本海で重力がピークを見せる晩秋とやや時期がずれていることがわかった。本研究ではさらにGNSSの座標値の季節変化を解析した。それらの変化のかなりの部分は季節変化する荷重(東北日本陸上の積雪と日本海の海水)による変形に起因すると考えられ、GRACEによる重力季節変化との整合性を確かめることができる。

図1の説明:2月と比較した、10月の日本付近の重力の値。日本海では正の偏差を示している。