JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] [EJ] 重力・ジオイド

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山本 圭香(国立天文台)、宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)、座長:宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)、座長:田中 俊行(公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

10:15 〜 10:30

[SGD02-06] 過去の稠密重力データの日本重力基準網2016への整合手法の高度化

*Miyazaki Takayuki1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:日本重力基準網2016

国土地理院は,全国に等しく正確な重力基準を提供するため,最新の重力測定のデータを用いて,絶対重力測定点約30点及び相対重力測定点約200点で構成される「日本重力基準網2016(JGSN2016)」を構築した.JGSN2016の精度は,絶対測定で約10μGal,相対測定で約20μGalと見積もられている.それに加えて,国土地理院は稠密な全国の重力分布を把握し,水準測量に正確な正標高補正を行うために1967~1993年に水準点や主要な三角点において相対重力測定を実施してきた.この測定で得られた日本全国を網羅する約14,000点におよぶ稠密な重力データは計量機器の校正など,現在も重力の基準として広く活用されている.しかし14,000点で重力データはJGSN75に基づく重力値であることから,現在のJGSN2016に基づく測定とは必ずしも測定誤差の範囲で一致しない.国土地理院が公開するJGSN75とJGSN2016の間の乖離は最大で数100μGalに達する.
GNSSを用いた標高決定が高度化し,普及されたことに伴って,高さの基準面としてのジオイド・モデルを構築する基盤データとしてさらに重要性が増している.ジオイド・モデルの精度・信頼性を向上するためには,信頼度の高い最新の稠密な地上重力データが不可欠であるが,全国を網羅する重力測定を新たに行い,完全にJGSN2016に準拠した稠密なデータを短期間で得ることは,人的・経済的なリソースを考慮すると非常に困難である.
JGSN75重力値をJGSN2016重力値に整合させるための手法の開発を進めている.昨年度はJGSN75重力値とJGSN2016重力値の差を地殻変動に起因する測定点の上下変動,地震による質量の再配分と系の構築時に既に存在していたシステムオフセットに分けて推定することで約40μGalの精度の変換を可能とする整合手法について報告した.これまでは測定点の上下変動量を重力変化へ換算する際の重力鉛直勾配値として第一次近似としてすべての測定点において一定値(ブーゲー勾配)を使用したため,地形による重力鉛直勾配の空間変化が省略されていた.
10mDEMデータを使用する重力地形補正プログラムを開発し,それを用いて各測定点のブーゲー勾配を計算することでより精度の高い推定を実施した.また地震断層の形状を考慮した測定点上下変動量の算出やデータ同化の手法を用いたシステムオフセットの推定結果についても報告する.