[SGD03-P02] 迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築に関する予備研究
キーワード:GNSS、PPP-AR、GEONET定常解析、GEONET
国土地理院は、GEONETで取得されるGNSSデータを定常的に解析し、日本全国の地殻変動を監視しており、その結果は、地震調査委員会、地震防災対策強化地域判定会においては地震本震やその後の余効変動による地殻変動データ、断層モデルを提供し地震活動の評価等に利用されているとともに、火山噴火予知連絡会においても活火山の山体の変化の監視や、噴火時の噴火活動の推移監視における基礎的な資料として活用されている。
しかし地殻変動の監視においては、現在の定常解析の性能をもってしても迅速性や時間分解能が不十分な場合もある。現状では、もっとも迅速なQ3解でも解析結果が得られるのがデータ取得後3時間後である。例えば、平成28年4月14日夜に発生した熊本地震においては、地殻変動情報が得られたのは翌15日の朝になった。地震調査委員会の臨時会は通常大地震発生の半日後には開催されるため、場合によっては地殻変動情報が提供できず、地震像の把握が遅れる可能性があった。
また、現状では、もっとも時間分解能が高い解もQ3解であるが、それでも時間分解能は6時間である。熊本地震では14日のM6.5の地震の3時間後に同等の規模の余震が発生しており、余震による地殻変動も生じていると考えられたが、15日午後の臨時会に提出した地殻変動情報においては、M6.5の地震による地殻変動と余震による地殻変動を分離できず、地震像の把握に支障があった。さらに、火山において噴火直前の山体膨張と、噴火後の収縮を監視するにも、現状の定常解では時間分解能が不足しており、火山活動の評価に支障をきたす可能性がある。
現状の定常解析よりも迅速性・時間分解能を向上させ、かつ精度の劣化をきたさない解析法として近年注目されているのが精密単独測位(Precise Point Positioning; PPP)と呼ばれる手法である。これは、GNSS衛星の精密な軌道および時刻情報を用いて、各観測局で単独測位を行うものである。PPPを用いれば、格段に少ない計算負荷で、1エポックごとの位置を算出できることが特徴である。特に、近年、衛星毎に異なる位相端数バイアス(Fractional Cycle Bias; FCB)と呼ばれる補正情報を追加することで、PPPにおいて波数の整数不確定性を決定する(Ambiguity Resolution; AR)ことが可能となり(PPP-AR法)、相対測位に匹敵する精度を出せる可能性が高くなった。さらにPPP-AR法には、超巨大地震で広域な地殻変動が発生した場合についても、電子基準点の変位を直接に算出でき固定点が不要であるという利点もある。
このような背景のもと、国土地理院では、PPP-AR法をベースに現在の定常解析よりも迅速・高精度な GNSS 解析手法を開発し、将来のGEONET定常解析を想定してこれを実装したプロトタイプシステムを開発すること目的とする特別研究を、2017年度より3年計画で開始した。この研究では、GEONETの1秒値データを用いて、定常的かつ安定的に、1秒間隔で水平方向のばらつき約1cmの解を、データ収集の約2時間後までに算出することを目標としている。
本講演では、現在検討中の解析システムの構成および、これまでに実施した予備研究の結果を紹介する。
しかし地殻変動の監視においては、現在の定常解析の性能をもってしても迅速性や時間分解能が不十分な場合もある。現状では、もっとも迅速なQ3解でも解析結果が得られるのがデータ取得後3時間後である。例えば、平成28年4月14日夜に発生した熊本地震においては、地殻変動情報が得られたのは翌15日の朝になった。地震調査委員会の臨時会は通常大地震発生の半日後には開催されるため、場合によっては地殻変動情報が提供できず、地震像の把握が遅れる可能性があった。
また、現状では、もっとも時間分解能が高い解もQ3解であるが、それでも時間分解能は6時間である。熊本地震では14日のM6.5の地震の3時間後に同等の規模の余震が発生しており、余震による地殻変動も生じていると考えられたが、15日午後の臨時会に提出した地殻変動情報においては、M6.5の地震による地殻変動と余震による地殻変動を分離できず、地震像の把握に支障があった。さらに、火山において噴火直前の山体膨張と、噴火後の収縮を監視するにも、現状の定常解では時間分解能が不足しており、火山活動の評価に支障をきたす可能性がある。
現状の定常解析よりも迅速性・時間分解能を向上させ、かつ精度の劣化をきたさない解析法として近年注目されているのが精密単独測位(Precise Point Positioning; PPP)と呼ばれる手法である。これは、GNSS衛星の精密な軌道および時刻情報を用いて、各観測局で単独測位を行うものである。PPPを用いれば、格段に少ない計算負荷で、1エポックごとの位置を算出できることが特徴である。特に、近年、衛星毎に異なる位相端数バイアス(Fractional Cycle Bias; FCB)と呼ばれる補正情報を追加することで、PPPにおいて波数の整数不確定性を決定する(Ambiguity Resolution; AR)ことが可能となり(PPP-AR法)、相対測位に匹敵する精度を出せる可能性が高くなった。さらにPPP-AR法には、超巨大地震で広域な地殻変動が発生した場合についても、電子基準点の変位を直接に算出でき固定点が不要であるという利点もある。
このような背景のもと、国土地理院では、PPP-AR法をベースに現在の定常解析よりも迅速・高精度な GNSS 解析手法を開発し、将来のGEONET定常解析を想定してこれを実装したプロトタイプシステムを開発すること目的とする特別研究を、2017年度より3年計画で開始した。この研究では、GEONETの1秒値データを用いて、定常的かつ安定的に、1秒間隔で水平方向のばらつき約1cmの解を、データ収集の約2時間後までに算出することを目標としている。
本講演では、現在検討中の解析システムの構成および、これまでに実施した予備研究の結果を紹介する。