10:45 〜 11:00
[SGL36-06] 白亜紀期前期の日本弧における後背地の経年変化:西南日本の上部ジュラ−下部白亜系前弧砂岩の砕屑性ジルコン年代
キーワード:白亜紀、弧-海溝系、砕屑性ジルコン、ウランー鉛年代、西南日本、後背地
弧-海溝系で形成される造山帯産物(付加体、高圧変成岩、弧花崗岩など)は古期のものほど断片化され、残存しにくいが、現在の日本には、領家花崗岩(火成弧)や三波川変成岩(沈み込み帯深部)など白亜紀の構成要素が比較的よく残されている。当時の弧−海溝系の表層における砕屑物の移動/分配パタンを解明するため、演者らは西南日本のジュラ-白亜系砂岩中の砕屑性ジルコンU-Pb年代測定を進めており、検出した砕屑性ジルコンの流入パタンの違いに基づき白亜紀当時の前弧/弧内/背弧盆地の分化過程が明らかにされつつある(中畑ほか, 2015, 2016a, 2016b)。さらに九州西部球磨山地、四国中部、および紀伊半島の秩父累帯に産する前弧盆地に堆積したジュラ紀後期—白亜紀前期の浅海/汽水性砂岩について、砕屑性ジルコンのU-Pb年代をLA-ICPMSを用いて測定した結果、いずれの試料も化石が示す堆積年代と調和的な年代スペクトルが得られ、以下のことがらが考察される。ジュラ紀後期—白亜紀前期の西南日本の地殻表層には、現在の日本には極めて稀な古生代末から中生代の花崗岩、とくにジュラ紀前期のものが広範に露出していた。大陸由来あるいはリサイクルされた先カンブリア時代の砕屑粒子も少量ながら定常的に前弧域に運ばれていたが、白亜紀前期Hauterivian以降には、前弧域に到達しなくなった。このような砕屑性ジルコン年代スペクトルの経年変化は、白亜紀前期のアジア東縁における活動的な弧—海溝系で、弧地殻が大きく成長したことを反映している。新しい花崗岩類が大量に火山弧の地下で定置されると、表層では隆起がおきて、古期花崗岩の露出/浸食、および大陸由来砕屑物の流入を阻止する明瞭な地形的障壁が出現したと推定される。