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[SGL37-02] 14C年代測定法の試料採集基準とカマン・カレホユックの14C編年への応用例
キーワード:14C年代測定(AMS)、考古遺跡、検証基準
本研究では,現在の炭化物試料の前処理の最も基本となるABA法について,これまで詳細に検証されてこなかった試料の材質,洗浄溶液の濃度,洗浄時間に対する化学的検証を行った結果に基づいている。本研究は考古実試料によって放射年代測定の年代値の収束性の改善結果を確認することを第一の目的とした.さらに,従来,試料数と採集位置の点で本格的導入例のなかったベイズ統計学的手法を年代較正に導入した。これによる放射年代による分析結果と考古学的編年との違いの有無を明らかにすることを第二の目的とした.この過程で,地質学的変動よりも短期の変動である考古編年を扱った.同編年は、遺物あるいは生物遺骸の変化や過去の自然/社会的事件に基づく時代区分である考古年代の時系列的集合体である。この結果、ABA法のアルカリ洗浄段階において、考古実試料のうち1 mol/lの NaOH溶液に溶解する試料を棄却した.年代値は9層準中4層準で50 14C yr以下の良好な収束性が観察された.3層準でも66~85 14C yr程度の年代値の収束が見られた.すなわち,この遺跡では数百年の期間を遡る古材の再利用や樹齢数百年の木材の利用はほぼ起きていない。この事実は木炭試料の年代値はほぼ建設年代を示している可能性を意味する.測定で得られた慣習的14C年代値は,年代補正プログラムOxCal ver.3.10によって,年代較正をおこなった.暦年代較正はINTCAL04を用いた.カマン・カレホユックのIVa 層と IVb層の境界の年代は,紀元前22世紀初頭から紀元前21世紀末だった.これはメソポタミアではウル第III王朝期にあたる.さらに,放射性炭素年代と相対年代の手法を用いて,カマン・カレホユックと西アナトリアのトロイの前期青銅器時代末から後期青銅器時代までの編年を対比することが出来た.この結果,トロイとキュルテペの考古遺物の形態分析による層序分析と,今回年代測定によって得られた放射年代値による比較との間には,ほぼ一文化亜層程度のずれが観察された.