10:15 〜 10:30
[SGL37-06] 開放温度と緩和時間
キーワード:拡散、球状物体、開放温度
球状物体中の拡散は厳密な解析解が存在する. Dodson(1973)は拡散方程式のArrhenius関係に着目し, ある程度の温度以下では拡散が急激に減少し放射性核種の生成率が拡散を上回ってほとんど増加分のみとみなせる温度を閉止温度Tcと定義した. 40Ar/39Ar年代測定で用いられる段階加熱は実験室での短い加熱時間ではあるが二次的再加熱過程とみなされる. また種々の鉱物の拡散パラメーターは拡散関係, Arrhenius関係を用いて計算されてきた. 岩体の冷却過程を二次的再加熱の逆過程とみなすことにより閉止温度の意味を再検討した. 球状物体中の拡散において蓄積した放射起源同位体の全体の20%以上が失われることは元の年代を再構築できないことにつながる. これを開放温度と名付け, 閉止温度に対応する物の下限と考えた. また系の99%を失う領域では拡散が卓越する. これをTdcと呼ぶことにし, TcとTucおよびTdcの比較を行った. Dodsonの定義からはTdcの直下がほぼTcということになる. しかし結果はTcはTucの値に近い. また鉱物粒径(拡散半径)が大きくなる(>100ミクロン)につれて不一致, 特にTdcでの不一致が大きくなることが見られた. これらの結果について考察する.