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[SGL37-08] 太古代のジルコンに包有されるアパタイトのストロンチウムと水素同位体測定
キーワード:太古代、ストロンチウム同位体、水素同位体、ウラン-鉛年代測定、二次イオン質量分析計
太古代に形成された岩石や鉱物試料は、後の地質時代の熱変成や熱水変質のために、オリジナルな地球化学的情報を保持している例は極めて少ない。例えば38億年前のグリーンランドの縞状鉄鉱床に含まれるアパタイトに包有される炭素質物質のδ13C値が低いことから生命の起源が議論された[1]。しかし、そのアパタイトは約15億年前の熱変成で600度まで加熱された可能性があり、炭素同位体比の結果は疑問視されている[2]。ジルコンは熱変成に強く、形成時にウランを取り込み、鉛を排出するため年代測定ができる最適な鉱物である[3]。我々はカナダの太古代の火成岩から分離したジルコンのウランー鉛年代をNanoSIMSにより測定した。次に、アパタイトを包有物として含むジルコンを選び、アパタイトのストロンチウムと水素同位体比の測定をNanoSIMSにより試みた。
カナダ、ケベック州のNuvvuagittuq地域で採取されたトーナル岩から通常の手法でジルコンを分離・抽出した[4]。得られたジルコンを年代の標準試料(QGNG)と一緒にエポキシ樹脂に埋め込み、表面を鏡面になるまで研磨した。金蒸着を施した後、NanoSIMSを用いてウランー鉛年代測定を行った。5nAの酸素一次ビームを直径15ミクロンに絞って試料表面に照射し、二次イオンを質量分析した。得られたPb+/UO+比を標準試料の値と比較してウランー鉛年代を求めた[5]。ジルコンに包有されるアパタイトのストロンチウム同位体比は、直径5ミクロンに絞られた酸素ビームで分析した[6]。一方、水素同位体比は直径1ミクロンに絞られたセシウム一次ビームを10x10ミクロンの領域をラスターして内側の2.5x2.5ミクロンの領域を分析した[7]。どちらの同位体比も、地球の標準試料の測定結果と比較して更正した。
ジルコンのウランー鉛年代は36億3千万年であった。ジルコンに包有されるアパタイトの87Sr/86Sr比は0.7095から0.7153まで変動した。さらに87Rb/86Sr比と弱い正の相関を示し、アイソクロンあるいは2成分のミキシングを示唆する。水素同位体比(δD値)は-210‰から+65‰まで変動し、水素濃度と正の相関を示した。こちらは2成分のミキシングを示唆する。
References: [1] Mojzsis et al. (1996) Nature 384, 55-59. [2] Sano et al. (1999) Nature 400, 127. [3] Willaims (1998) Rev. Economic Geol. 7, 1-35. [4] David et al. (2009) GSA Bull. 121, 150-163. [5] Takahata et al. (2008) Gond. Res. 14, 587-596. [6] Sano et al. (2014) J. Asian Earth Sci. 92, 10-17. [7] Koike et al. (2016) Geochem. J. 50, 363-377.
カナダ、ケベック州のNuvvuagittuq地域で採取されたトーナル岩から通常の手法でジルコンを分離・抽出した[4]。得られたジルコンを年代の標準試料(QGNG)と一緒にエポキシ樹脂に埋め込み、表面を鏡面になるまで研磨した。金蒸着を施した後、NanoSIMSを用いてウランー鉛年代測定を行った。5nAの酸素一次ビームを直径15ミクロンに絞って試料表面に照射し、二次イオンを質量分析した。得られたPb+/UO+比を標準試料の値と比較してウランー鉛年代を求めた[5]。ジルコンに包有されるアパタイトのストロンチウム同位体比は、直径5ミクロンに絞られた酸素ビームで分析した[6]。一方、水素同位体比は直径1ミクロンに絞られたセシウム一次ビームを10x10ミクロンの領域をラスターして内側の2.5x2.5ミクロンの領域を分析した[7]。どちらの同位体比も、地球の標準試料の測定結果と比較して更正した。
ジルコンのウランー鉛年代は36億3千万年であった。ジルコンに包有されるアパタイトの87Sr/86Sr比は0.7095から0.7153まで変動した。さらに87Rb/86Sr比と弱い正の相関を示し、アイソクロンあるいは2成分のミキシングを示唆する。水素同位体比(δD値)は-210‰から+65‰まで変動し、水素濃度と正の相関を示した。こちらは2成分のミキシングを示唆する。
References: [1] Mojzsis et al. (1996) Nature 384, 55-59. [2] Sano et al. (1999) Nature 400, 127. [3] Willaims (1998) Rev. Economic Geol. 7, 1-35. [4] David et al. (2009) GSA Bull. 121, 150-163. [5] Takahata et al. (2008) Gond. Res. 14, 587-596. [6] Sano et al. (2014) J. Asian Earth Sci. 92, 10-17. [7] Koike et al. (2016) Geochem. J. 50, 363-377.