[SGL38-P03] 房総半島南端豊房層群東長田層最下部の酸素同位体層序
千葉県の更新統には房総半島中部~東部に分布する上総層群,銚子地域に分布する犬吠層群,房総半島南端に分布する豊房層群がある.この様な同時代の地層を複数の地域で対比することで空間的な古環境復元が可能となる.特に,房総半島の周辺海域は黒潮と親潮の会合域となっている.このため,気候変動に伴う親潮・黒潮の南北移動を鋭敏にとらえることが出来る.
本研究では房総半島南端に分布する豊房層群東長田層を対象とする.豊房層群において微化石層序,古地磁気層序の検討,上総層群中のテフラの対比も行われてきた(小竹ほか1995,1996など).しかし酸素同位体層序についての研究は行われていない.そこで本研究では豊房層群でMatuyama-Brunhes境界が確認され層序学的にも重要であり,またテフラにより上総層群とも直接対比が可能である東長田層の最下部での有孔虫化石を用いた酸素同位体層序の構築を行う.併せて浮遊性有孔虫化石の群集解析を行うことで古環境情報を得ていく.
酸素同位体比測定は底生有孔虫のUvigerina spp.,浮遊性有孔虫Globorotalia inflata,Globigerinoides ruberの3種類で行った.底生有孔虫は海底,浮遊性有孔虫のG. inflataは水深100~250m,G. ruberは表層~水深50m程度に生息している.このためそれぞれ深層水,中層水,表層水の同位体比を記録している.
得られた酸素同位体曲線を上総層群国本層の酸素同位体曲線(羽田ほか,2016)に対比させた.対比の結果,本研究層準の年代はおよそ776ka~756kaにあたることが分かった.対比点の底生有孔虫の酸素同位体値を比較すると東長田層の方が0.49‰重く,水温で約2℃低い.これは堆積時の水深が東長田層の方が深かったことを示唆している.
東長田層での表層水棲のG.ruberと底棲のUvigerina spp.の酸素同位体比は平均で4.23‰Uvigeerina spp.のほうが重い.これを水温の差に換算すると深層水の水温が16.9℃低いことになる.現在と東長田層堆積時の海水温の鉛直構造が同じであったと仮定すると,水深1000m付近で堆積したことになる.
7試料で浮遊性有孔虫化石の群集解析を行い7属18種を同定した.得られた群集組成をTakemoto and Oda (1997),新村ほか(2006)で作られた変換関数に応用して表層水温の復元を行った.年平均気温は誤差の範囲も含め16.9℃~20.5℃であり,現在の房総半島周辺海域の平均水温(20℃~21℃)より,やや低い結果であった.また層厚3m地点で水温が低下している.因子負荷量の変化に注目するとこれは一時的に黒潮の影響が弱くなったためであると分かる.今後,上総層群や犬吠層群でも同様の研究を行うことで水塊移動の復元が期待される.
本研究では房総半島南端に分布する豊房層群東長田層を対象とする.豊房層群において微化石層序,古地磁気層序の検討,上総層群中のテフラの対比も行われてきた(小竹ほか1995,1996など).しかし酸素同位体層序についての研究は行われていない.そこで本研究では豊房層群でMatuyama-Brunhes境界が確認され層序学的にも重要であり,またテフラにより上総層群とも直接対比が可能である東長田層の最下部での有孔虫化石を用いた酸素同位体層序の構築を行う.併せて浮遊性有孔虫化石の群集解析を行うことで古環境情報を得ていく.
酸素同位体比測定は底生有孔虫のUvigerina spp.,浮遊性有孔虫Globorotalia inflata,Globigerinoides ruberの3種類で行った.底生有孔虫は海底,浮遊性有孔虫のG. inflataは水深100~250m,G. ruberは表層~水深50m程度に生息している.このためそれぞれ深層水,中層水,表層水の同位体比を記録している.
得られた酸素同位体曲線を上総層群国本層の酸素同位体曲線(羽田ほか,2016)に対比させた.対比の結果,本研究層準の年代はおよそ776ka~756kaにあたることが分かった.対比点の底生有孔虫の酸素同位体値を比較すると東長田層の方が0.49‰重く,水温で約2℃低い.これは堆積時の水深が東長田層の方が深かったことを示唆している.
東長田層での表層水棲のG.ruberと底棲のUvigerina spp.の酸素同位体比は平均で4.23‰Uvigeerina spp.のほうが重い.これを水温の差に換算すると深層水の水温が16.9℃低いことになる.現在と東長田層堆積時の海水温の鉛直構造が同じであったと仮定すると,水深1000m付近で堆積したことになる.
7試料で浮遊性有孔虫化石の群集解析を行い7属18種を同定した.得られた群集組成をTakemoto and Oda (1997),新村ほか(2006)で作られた変換関数に応用して表層水温の復元を行った.年平均気温は誤差の範囲も含め16.9℃~20.5℃であり,現在の房総半島周辺海域の平均水温(20℃~21℃)より,やや低い結果であった.また層厚3m地点で水温が低下している.因子負荷量の変化に注目するとこれは一時的に黒潮の影響が弱くなったためであると分かる.今後,上総層群や犬吠層群でも同様の研究を行うことで水塊移動の復元が期待される.