14:45 〜 15:00
[SIT21-05] 新生代北東アジアテクトニクスはスタグナント太平洋プレートのマントル深部脱水作用を必要とするか?
キーワード:hydration weakening of lithosphere, stagnant slab, serpentine diapir, choke point of H2O, strike-slip tectonics, grain size reduction
マントル遷移層のスタグナント太平洋プレート由来の流体成分が,北東アジアの新生代テクトニクスに重要な役割を果たしているというモデルが提案されている.しかし,鉱物学,岩石学,地質学的見地から,このマントル深部脱水モデルには多くの重大な見落としがある.
スラブ脱水反応によって放出されたH2Oによって蛇紋岩化マントルがマントルウェッジ最下部に形成されると考えられている.H2Oが深部マントルにもたらされるには,蛇紋岩化マントルが高密度含水ケイ酸塩鉱物が安定な6GPaまでスラブと共に沈み込む必要がある.しかし,蛇紋岩化マントルの主要構成鉱物である蛇紋石の物性は,蛇紋岩化マントル沈み込みが困難であることを示している.蛇紋石の密度はカンラン石の密度より著しく小さく,蛇紋岩化マントルは自らの浮力のため沈み込むことができない.蛇紋岩化マントルを沈み込ませるには,沈み込むスラブからの引きずりが必要である.しかし,蛇紋石の機械強度はカンラン石よりも小さいため,蛇紋岩化マントルはスラブ引きずりに対して滑り面として働くと考えられる.従って,スラブ引きずりは蛇紋岩化マントルに有効に働かないと考えられる.
太平洋プレートの最も古い部分と,若いフィリピン海プレートが二重沈み込みを行う中部日本は,蛇紋岩化マントルが6Gaまで沈み込める場所と考えられている.しかし,この場所で太平洋プレートの海溝系はNNE-SSW方向からNS方向に向きを変える.このようなスラブジオメトリーの転換点では,走行平行張力によってスラブウィンドが開くと考えられる.スラブウィンドウを通じて,マントルウェッジはサブスラブマントルと相互作用を起こし,温度を上昇させると考えられる.中部日本における火山フロントの海溝側への移動は,伊豆ー小笠原弧の衝突による地質構造の屈曲が原因であると考えられる.
西南日本山陰玄武岩のNb負異常は,マントル深部脱水作用の重要な証拠と見なされている.しかし,見積もられている含水量(1.5%)はハワイなどのOIBと同程度である.西南日本は付加体コンプレックスから形成されており,山陰玄武岩の地球化学的特徴は島弧リソスフェアの関与によって説明可能である.九州で観察される火山岩の地球化学的特徴と九州-パラオ海嶺の関係は,島弧火山岩類の地球学的特徴がスラブ由来流体ではなく,島弧リソスフェアの関与によって説明されることを示している.
深部脱水作用によって付加されたH2Oによるリソスフェア脆弱化が,北東アジアのリソスフェア薄化をもたらしたと考えられている.北東アジアにはタン・ルー断層など多数の横ずれ断層が発達する.横ずれ剪断による鉱物粒子の細粒化はリソスフェア脆弱化をもたらす.伸張テクトニクスを原因とする反応も鉱物粒子を細粒化させリソスフェアを脆弱化させる.剪断駆動溶融作用はマントル上昇流をリソスフェアの脆弱部に集中させ,さらなる脆弱化と薄化をもたらすと考えられる.
鉱物学,岩石学,地質学的見地から,上述のようにスタグナント太平洋プレートのマントル深部脱水作用を主張する研究には多数の重大な見落としがある.北東アジアから得られる証拠の束とそれらに基づく複眼的考察は,北東アジアで観察される地質事象は横ずれ伸張テクトニクスなどの浅所マントルの作用によって説明されることを示している.
スラブ脱水反応によって放出されたH2Oによって蛇紋岩化マントルがマントルウェッジ最下部に形成されると考えられている.H2Oが深部マントルにもたらされるには,蛇紋岩化マントルが高密度含水ケイ酸塩鉱物が安定な6GPaまでスラブと共に沈み込む必要がある.しかし,蛇紋岩化マントルの主要構成鉱物である蛇紋石の物性は,蛇紋岩化マントル沈み込みが困難であることを示している.蛇紋石の密度はカンラン石の密度より著しく小さく,蛇紋岩化マントルは自らの浮力のため沈み込むことができない.蛇紋岩化マントルを沈み込ませるには,沈み込むスラブからの引きずりが必要である.しかし,蛇紋石の機械強度はカンラン石よりも小さいため,蛇紋岩化マントルはスラブ引きずりに対して滑り面として働くと考えられる.従って,スラブ引きずりは蛇紋岩化マントルに有効に働かないと考えられる.
太平洋プレートの最も古い部分と,若いフィリピン海プレートが二重沈み込みを行う中部日本は,蛇紋岩化マントルが6Gaまで沈み込める場所と考えられている.しかし,この場所で太平洋プレートの海溝系はNNE-SSW方向からNS方向に向きを変える.このようなスラブジオメトリーの転換点では,走行平行張力によってスラブウィンドが開くと考えられる.スラブウィンドウを通じて,マントルウェッジはサブスラブマントルと相互作用を起こし,温度を上昇させると考えられる.中部日本における火山フロントの海溝側への移動は,伊豆ー小笠原弧の衝突による地質構造の屈曲が原因であると考えられる.
西南日本山陰玄武岩のNb負異常は,マントル深部脱水作用の重要な証拠と見なされている.しかし,見積もられている含水量(1.5%)はハワイなどのOIBと同程度である.西南日本は付加体コンプレックスから形成されており,山陰玄武岩の地球化学的特徴は島弧リソスフェアの関与によって説明可能である.九州で観察される火山岩の地球化学的特徴と九州-パラオ海嶺の関係は,島弧火山岩類の地球学的特徴がスラブ由来流体ではなく,島弧リソスフェアの関与によって説明されることを示している.
深部脱水作用によって付加されたH2Oによるリソスフェア脆弱化が,北東アジアのリソスフェア薄化をもたらしたと考えられている.北東アジアにはタン・ルー断層など多数の横ずれ断層が発達する.横ずれ剪断による鉱物粒子の細粒化はリソスフェア脆弱化をもたらす.伸張テクトニクスを原因とする反応も鉱物粒子を細粒化させリソスフェアを脆弱化させる.剪断駆動溶融作用はマントル上昇流をリソスフェアの脆弱部に集中させ,さらなる脆弱化と薄化をもたらすと考えられる.
鉱物学,岩石学,地質学的見地から,上述のようにスタグナント太平洋プレートのマントル深部脱水作用を主張する研究には多数の重大な見落としがある.北東アジアから得られる証拠の束とそれらに基づく複眼的考察は,北東アジアで観察される地質事象は横ずれ伸張テクトニクスなどの浅所マントルの作用によって説明されることを示している.