10:15 〜 10:30
[SIT22-06] ニュートリノ振動を用いた核・下部マントル中の水素の探索
キーワード:chemical composition, lower mantle, outer core, neutrino
近年、下部マントルはこれまで想定されていたよりも多くの水を含みうることが報告された。また、外核中に含まれる軽元素として、水素が着目されている。しかし、下部マントルや外核のサンプリングすることは現状では困難であることから、地球深部の水素量についての情報を直接得ることはできない。
一方、近年の高圧実験の目覚ましい進歩により、地球深部の温度圧力条件を実験室中で再現することが可能となり、地球深部の化学組成に制限を与えている。しかし、地球深部と同じ温度圧力条件下で、地球深部と同じ弾性波速度を再現する化学組成モデルは複数存在しうるため、高圧実験だけから地球深部の化学組成を決定するのは困難である。
上述のように、地球外核の化学組成、特に水素量を知る手掛かりは限られているのが現状である。我々は、これまで、大気ニュートリノを用いた外核の組成測定についての研究を行ってきた。この研究は下部マントル中の水分量の測定にも応用可能である。また、太陽ニュートリノを用いることで、さらに感度を向上させることが可能であることを新たに発見した。
ニュートリノとは素粒子の一種である。ニュートリノは反応断面積が小さい、言い換えると物質貫通能力が高いため、地球を容易に貫通することができる。ニュートリノには3つの種類があり、それぞれ電子型、ミュー型、タウ型と名付けられている。ニュートリノは大気中や、太陽中で絶えず生成されており、光を除くと、地表面で最も数の多い素粒子である。
ニュートリノは、ニュートリノ振動という、他の素粒子に無い特異な性質を持っている。ニュートリノ振動とは、ニュートリノの種類が時間と共に別の種類のニュートリノに変化する現象のことを指す。例えば、生成された際はミュー型ニュートリノであったものが、電子型ニュートリノとして検出される、等である。変化する確率は、ニュートリノの混合角、質量、そして周囲の電子数密度によって一意に決まり、混合角や質量は他の実験から測定できるため、ニュートリノ振動を精度よく測定することによって、物体の電子数密度を測定することができる。
従って、大気中や太陽中で生成され、地球を貫通したニュートリノを測定することで、地球深部の電子数密度分布を測定することが可能となる。地球内部の物質密度は、地震波や地球の自由振動の測定等から、精度よく決まっている。物質密度と電子数密度の比は、質量数と原子番号の比(Z/A)に等しいため、ニュートリノ振動の測定から、地球深部の平均化学組成を得ることができる。岩石のZ/Aはおよそ0.5、鉄のZ/Aはおよそ0.47であるのに対し、水素のZ/Aは1であるため、ニュートリノ振動は特に水素に感度が高い。この性質を用いて、地球深部での水素の探索を行うことが可能である。
ニュートリノは既に多くの実験によって測定がなされている。我が国が誇るスーパーカミオカンデやカムランド、南極にあるIceCube等が有名であるが、既存の実験では、地球深部の化学組成を十分な精度で測定することはできない。スーパーカミオカンデでは統計精度が足りないため、カムランドやIceCubeでは感度のあるエネルギー領域が異なるためである。地球深部の化学組成測定に必要となるのは、10億電子ボルトから100億電子ボルトの間の、大気中で生成されたニュートリノ、または数百万電子ボルトから数千万電子ボルトの間の、太陽中で生成されたニュートリノを、十分な感度で測定することのできる装置である。現在、ハイパーカミオカンデ、IceCube Gen2 Phase-1、ORCA等、次世代のニュートリノ観測実験が複数計画されており、それらを用いることで、近い将来に地球深部の平均化学組成を測定することが可能となる。
本講演では、ニュートリノ振動を用いた地球深部の水素量の探索について、特に下部マントル中の水分量の測定について述べる。
一方、近年の高圧実験の目覚ましい進歩により、地球深部の温度圧力条件を実験室中で再現することが可能となり、地球深部の化学組成に制限を与えている。しかし、地球深部と同じ温度圧力条件下で、地球深部と同じ弾性波速度を再現する化学組成モデルは複数存在しうるため、高圧実験だけから地球深部の化学組成を決定するのは困難である。
上述のように、地球外核の化学組成、特に水素量を知る手掛かりは限られているのが現状である。我々は、これまで、大気ニュートリノを用いた外核の組成測定についての研究を行ってきた。この研究は下部マントル中の水分量の測定にも応用可能である。また、太陽ニュートリノを用いることで、さらに感度を向上させることが可能であることを新たに発見した。
ニュートリノとは素粒子の一種である。ニュートリノは反応断面積が小さい、言い換えると物質貫通能力が高いため、地球を容易に貫通することができる。ニュートリノには3つの種類があり、それぞれ電子型、ミュー型、タウ型と名付けられている。ニュートリノは大気中や、太陽中で絶えず生成されており、光を除くと、地表面で最も数の多い素粒子である。
ニュートリノは、ニュートリノ振動という、他の素粒子に無い特異な性質を持っている。ニュートリノ振動とは、ニュートリノの種類が時間と共に別の種類のニュートリノに変化する現象のことを指す。例えば、生成された際はミュー型ニュートリノであったものが、電子型ニュートリノとして検出される、等である。変化する確率は、ニュートリノの混合角、質量、そして周囲の電子数密度によって一意に決まり、混合角や質量は他の実験から測定できるため、ニュートリノ振動を精度よく測定することによって、物体の電子数密度を測定することができる。
従って、大気中や太陽中で生成され、地球を貫通したニュートリノを測定することで、地球深部の電子数密度分布を測定することが可能となる。地球内部の物質密度は、地震波や地球の自由振動の測定等から、精度よく決まっている。物質密度と電子数密度の比は、質量数と原子番号の比(Z/A)に等しいため、ニュートリノ振動の測定から、地球深部の平均化学組成を得ることができる。岩石のZ/Aはおよそ0.5、鉄のZ/Aはおよそ0.47であるのに対し、水素のZ/Aは1であるため、ニュートリノ振動は特に水素に感度が高い。この性質を用いて、地球深部での水素の探索を行うことが可能である。
ニュートリノは既に多くの実験によって測定がなされている。我が国が誇るスーパーカミオカンデやカムランド、南極にあるIceCube等が有名であるが、既存の実験では、地球深部の化学組成を十分な精度で測定することはできない。スーパーカミオカンデでは統計精度が足りないため、カムランドやIceCubeでは感度のあるエネルギー領域が異なるためである。地球深部の化学組成測定に必要となるのは、10億電子ボルトから100億電子ボルトの間の、大気中で生成されたニュートリノ、または数百万電子ボルトから数千万電子ボルトの間の、太陽中で生成されたニュートリノを、十分な感度で測定することのできる装置である。現在、ハイパーカミオカンデ、IceCube Gen2 Phase-1、ORCA等、次世代のニュートリノ観測実験が複数計画されており、それらを用いることで、近い将来に地球深部の平均化学組成を測定することが可能となる。
本講演では、ニュートリノ振動を用いた地球深部の水素量の探索について、特に下部マントル中の水分量の測定について述べる。