11:00 〜 11:15
[SIT22-32] 地球外核の上部安定成層に対する組成対流の貫入
キーワード:Thermal conductivity, heat flux, compositional flux, production of kinetic energy
近年の第一原理計算ならびに高圧実験から, 惑星中心核条件下での熱伝導率が, これまでに議論されていた値よりも大きいことが示唆されている(Pozzo et al. 2012, 2014; Gomi et al. 2013). この新しい熱伝導率を用いた 1 次元熱バランスモデルを用いて, 外核内での安定成層の生成が議論されている(Gomi et al. 2013, Labrosse 2015). そこでは, 核マントル境界(CMB)における熱流量 Q_{cmb} が小さい場合に安定成層が数 1000 km の暑さに及ぶ結果が示されている.
かれらは安定成層の存在を判定するのに熱フラックスが下向きであることを用いている. この条件は, 外核内の流体運動が熱によってのみ引き起こされている場合には適切であるが, 内核の成長に伴い外核下部に放出される軽成分の浮力により駆動される, いわゆる組成対流も同時に生じている状況では正しくない. 組成対流が熱的な安定性に打ち勝てる程度に激しければ
熱的に生成された安定成層は混合され, 中立状態になってしまうだろう.
熱組成対流がどこで発生できるかを定量的に判断するひとつの基準として, われわれは熱的および組成のどちらにも起因する浮力による仕事率(運動エネルギー生成)を提案する. 仕事率は熱フラックスに比例する項と組成フラックスに比例する項から成っている. 仕事率が正である領域は浮力により運動エネルギーが生成できるので対流が発生可能であると判断できる. 逆に仕事率が負の領域では運動エネルギーが生成できないため, 安定成層が形成される可能性があると判断できる.
新しい熱伝導率を用いた地球外核の 1 次元熱および組成収支モデルを構築し, 仕事率の動径分布をさまざまな Qcmb に対して計算したところ, Qcmb > 9.3 TW の場合には安定成層が形成されず全層対流が発生する結果となった. 一方 Qcmb< 4.8 TW の場合には, CMB 直下に数 10km 程度の安定成層ができる可能性があることが示された.
参考文献
Pozzo, M., Davies, C., Gubbins, D., and D. Alfe,2012. Thermal and electrical conductivity of iron at Earth's core conditions. Nature 485, 355--358.
Gomi, H., Ohta, K., Hirose, K., Labrosse, S., Caracas, R., Verstraete, M. J., Hernlund, J. W., 2013. The high conductivity of iron and thermal evolution of the Earth's core. Phys. Earth Planet. Inter., 224, 88--103.
Pozzo, M., Davies, C., Gubbins, D., and D. Alfe, 2014. Thermal and electrical conductivity of solid iron and iron-silicon mixtures at Earth's core conditions. Earth Planet. Sci. Lett., 393, 159--164.
Labrosse, S., 2015: Thermal evolution of the core with a high thermal conductivity. Phys. Earth Planet. Inter., 247, 36--55.
かれらは安定成層の存在を判定するのに熱フラックスが下向きであることを用いている. この条件は, 外核内の流体運動が熱によってのみ引き起こされている場合には適切であるが, 内核の成長に伴い外核下部に放出される軽成分の浮力により駆動される, いわゆる組成対流も同時に生じている状況では正しくない. 組成対流が熱的な安定性に打ち勝てる程度に激しければ
熱的に生成された安定成層は混合され, 中立状態になってしまうだろう.
熱組成対流がどこで発生できるかを定量的に判断するひとつの基準として, われわれは熱的および組成のどちらにも起因する浮力による仕事率(運動エネルギー生成)を提案する. 仕事率は熱フラックスに比例する項と組成フラックスに比例する項から成っている. 仕事率が正である領域は浮力により運動エネルギーが生成できるので対流が発生可能であると判断できる. 逆に仕事率が負の領域では運動エネルギーが生成できないため, 安定成層が形成される可能性があると判断できる.
新しい熱伝導率を用いた地球外核の 1 次元熱および組成収支モデルを構築し, 仕事率の動径分布をさまざまな Qcmb に対して計算したところ, Qcmb > 9.3 TW の場合には安定成層が形成されず全層対流が発生する結果となった. 一方 Qcmb< 4.8 TW の場合には, CMB 直下に数 10km 程度の安定成層ができる可能性があることが示された.
参考文献
Pozzo, M., Davies, C., Gubbins, D., and D. Alfe,2012. Thermal and electrical conductivity of iron at Earth's core conditions. Nature 485, 355--358.
Gomi, H., Ohta, K., Hirose, K., Labrosse, S., Caracas, R., Verstraete, M. J., Hernlund, J. W., 2013. The high conductivity of iron and thermal evolution of the Earth's core. Phys. Earth Planet. Inter., 224, 88--103.
Pozzo, M., Davies, C., Gubbins, D., and D. Alfe, 2014. Thermal and electrical conductivity of solid iron and iron-silicon mixtures at Earth's core conditions. Earth Planet. Sci. Lett., 393, 159--164.
Labrosse, S., 2015: Thermal evolution of the core with a high thermal conductivity. Phys. Earth Planet. Inter., 247, 36--55.