JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT23] [EE] Structure and Dynamics of Earth and Planetary Mantles

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:中川 貴司(海洋研究開発機構数理科学・先端技術研究分野)、趙 大鵬(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)

[SIT23-P05] Numerical simulations on the formation and behaviors of slabs in 2-D spherical annulus

*土田 真愛1亀山 真典1 (1.国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:subducted slab, stagnant slab, mantle convection, numerical simulation

近年の地震波トモグラフィー研究により、マントル中に沈み込んだプレート(スラブ) は沈み込み帯ごとに異なる描像を示すことが明らかにされている。その例として、660 km不連続面で水平に横たわり停滞するもの (いわゆる「停滞スラブ」) や660 km不連続面で停滞せずにすぐ下部マントルに到達するもの (いわゆる「貫入スラブ」) 、などが挙げられる。このようなスラブの挙動・形態の違いが生じる原因を探るため、マントル中に沈み込むプレートの数値シミュレーション研究がこれまでにも多く行われてきたが、そのほとんどは2次元の箱型形状モデルに基づくものに限られていた。そこで本研究では、地球の曲率の効果を模した2次元の円環状モデルを新たに開発し、これを用いてプレート沈み込みの数値シミュレーションを行う。これにより、地震波トモグラフィー研究によって観測されているような様々なスラブの挙動・形態の再現とそれらの発現する条件の解明を目的とする。また、マントル中のスラブの形態からそこでのプレート速度や660 km不連続面の性質の制約を試みる。

本研究では2次元円環の8分の1 (45度分) に相当するモデル領域内において、冷たいスラブの沈み込みと海溝後退の動きによって駆動されるマントル物質 (拡張ブシネスク近似流体) の熱対流を考える。マントル物質の粘性は温度・圧力の両方に依存すると仮定した。深さ410 kmと660 kmでのマントル物質の相転移の効果を考慮した。海洋プレートの沈み込みは、最大深さ400 kmまで「海溝」から右斜め下方に延びる「流路」に沿って低温の流体を一定速度 (海洋プレート速度) で流し込むことによってモデル化している。ここでは、海溝後退速度、海洋プレート速度、上部‐下部マントル間の粘性ジャンプ、660 km不連続面におけるクラペイロン勾配4つのパラメータを系統的に変化させて数値シミュレーションを行い、各条件下でのスラブの挙動・形態を調べた。

シミュレーションを行った結果、海溝後退速度、海洋プレート速度、粘性ジャンプ、660 km不連続面におけるクラペイロン勾配の4つのパラメータの組み合わせによって異なるスラブの挙動・形態が発現し、それらによって地震波トモグラフィーで観測されるスラブの多様さを十分網羅しうることが分かった。またシミュレーションで発現するスラブの挙動・形態は、(1) 下部マントルに即座に「貫入」、(2)不連続面で「蓄積」、(3) 不連続面上に「浮揚」、(4) 不連続面で水平に横たわるように「停滞」、(5) 「停滞」したのちに下部マントルへ「崩落」、という5つのタイプに分類することができた。加えて、本研究のシミュレーションと地震波トモグラフィーで得られているスラブの形態を比較することによって、沈み込み帯における各パラメータ値の制約を試みた。プレート収束速度と沈み込みの継続時間の双方が十分制約されている複数の沈み込み帯について比較を行った結果、沈み込んだスラブの形態から海溝後退速度を有意に制約できることが分かった。このことはプレートとプレートの相対速度 (プレート収束速度) という観測量からプレートの絶対速度 (海溝後退速度や海洋プレート速度) を導き出す上で、沈み込んだスラブの形態が重要な制約条件になり得ることを意味している。またこのような比較は、クラペイロン勾配や粘性ジャンプといった660 km不連続面の性質に対する数値流体力学的な制約を与え得るかもしれない。