JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT29] [EE] New perspectives on East Asia geodynamics from the crust to the mantle

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:Timothy B Byrne(University of Connecticut)、木村 学(東京海洋大学・学術研究院)、Jonny Wu(University of Houston)、沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SIT29-P02] Stress field did not change at 15 Ma in SW Japan: Counterevidence from dike orientations

*羽地 俊樹1山路 敦1佐藤 活志1 (1.京都大学理学部)

キーワード:Miocene, paleostress, Southwest Japan, Japan Sea

西南日本では広域的に,岩脈群のトレンドが15 Maをさかいに転換したとされる.そして,それは日本海拡大にともなう伸張テクトニクスの終了をあらわす現象と考えられてきた.兵庫県北部の但馬妙見山地域は,そうした新旧の岩脈群がみられる代表的地域とされ,岩脈群の平均方位は古いほうの8枚の岩脈でENE,若いほうの51枚の岩脈でNNWとされている(小林,1979a, b; Tsunakawa, 1986).それらのトレンドがσ2軸とσ3軸のどちらなのかを,15 Ma前後の断層運動から推定したのが従来説である.ところが15Ma以前にできた明確なグラーベンが,その地域を含む西南日本の陸上部ではほとんど見つかっておらず,また,15 Ma以降の中期中新世の地層でsyn-tectonicに堆積したことが明確なものも知られていない.

今回,但馬妙見山地域において,われわれは388枚の板状貫入岩体を観察し,従来説を否定する結果をえた.それには,最近の応力解析法の進展が背景になっている.今日では貫入岩の方向から3本の主応力軸の方向がわかり,また,σ2がσ3とσ1のどちらに近いかをあらわす応力比もわかり,さらにマグマ圧にかんする情報までひきだすことができる(Baer et al., 1994).複数の応力を記録したデータからは,それらの応力を分離することができ,また,検出すべき応力の数も判定できる(Yamaji and Sato, 2011).

今回,堆積年代が約20~14 Maにまたがる北但層群のなかの板状貫入岩体から集めた方向データを,母岩の八鹿層・豊岡層・村岡層ごとにYamaji and Sato (2011)の方法(ソフトウェアはYamaji (2016)のGArcmB)で処理した.この地域ではさいわい地層がほぼ水平なので,傾動補正をせずとも誤差は小さい.その結果,応力比が低くσ3軸がNE-SWという,同一の正断層型応力が3層から検出された.マグマの駆動流体圧は比較的高かった.また,3枚の岩脈からはジルコン分離に成功し,13~17 Maのフィッション・トラック年代およびU-Pb年代をえた.最上位の村岡層では多くはないがシルも見られる.同層からは,σ2軸がNE-SWの逆断層型応力も検出された.しかしシルの一枚は14.6 ± 0.6と13.9 ± 0.4 MaというK-Ar年代を示すので(Tsunakawa, 1983),シルが岩脈より若いわけではない.村岡層から検出された正断層型と逆断層型の応力でσHmax方向が近似していることから,頁岩からなる村岡層には正断層型応力下でもシルが形成されやすかったとわれわれは考えている.露頭でも実際,シルと岩脈が連結したさまが観察される.

これらのことから,但馬妙見山地域では従来説と異なり,15 Maに応力場転換はなかったとわれわれは結論する.