[SMP42-P04] 長崎県野母半島の長崎変成岩中の蛇紋岩メランジュの岩石学的研究
キーワード:長崎変成岩、蛇紋岩メランジュ、変成火山岩
長崎県西彼杵半島、野母半島、熊本県天草下島に分布する結晶片岩類を主体とする低温高圧型の変成岩類は長崎変成岩と呼ばれる。野母半島の長崎変成岩類は、結晶片岩類、蛇紋岩類および変成ハンレイ岩の3つに分類される。蛇紋岩には蛇紋岩メランジュが発達し、蛇紋岩メランジュのマトリクスは、主にアクチノ閃石片岩、緑泥石―アクチノ閃石片岩で構成される。このマトリクスは、非常に片理の発達した剥離性に富む岩石で、レンズ状の岩塊をブロックとして包有している。鉱物組合せは、アクチノ閃石+ホルンブレンド+曹長石+緑泥石+緑レン石+白雲母+方解石+磁鉄鉱である。アクチノ閃石が定向配列することで片理を形成しており、緑簾石や褐色角閃石のポーフィロクラストを伴う。この地域の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊には、変成火山岩(枕状溶岩、ピローブレッチャー、火山角礫岩、水中自破砕岩)、角閃岩、マイロナイト、カタクラサイト、曹長岩、変成ハンレイ岩、蛇紋岩などが見られる。変成火山岩類は1~10mの巨大なブロックとして産する。特に枕状溶岩は、ほとんど変形を受けておらず、丸いピローローブの間を緑レン石に富む層が埋める組織を示す。鉱物組合せは、オンファス輝石+緑泥石+白雲母+緑レン石+曹長石+チタン磁鉄鉱である。ピローブレッチャーでは、枕状溶岩からピローブレッチャーへの漸移が見られ、気泡が抜けた後に方解石が充填したような組織も観察される。鉱物組合せは、ウィンチ閃石+緑泥石+緑レン石+曹長石+方解石+チタン磁鉄鉱である。水中自破砕岩では、同質の角張った岩石片がパズルのピースの様に破砕されている産状が確認でき、鉱物組合せはウィンチ閃石―バロア閃石+緑泥石+緑レン石+白雲母+曹長石+チタン磁鉄鉱である。火山角礫岩では、水中自破砕岩とは対照的な丸みを帯びた様々な岩石がブロックとして基質中に産する。鉱物組合せは、ウィンチ閃石―バロア閃石+アクチノ閃石+緑泥石+緑レン石+曹長石+チタン磁鉄鉱である。角閃岩は、1~2mの大きさのブロックとして産し、鉱物組合せは、ウィンチ閃石―バロア閃石+トレモラ閃石―アクチノ閃石+緑泥石+緑レン石+白雲母+曹長石+チタン磁鉄鉱である。マイロナイトは、1m未満の大きさのブロックとして産し、面構造が発達し、縞状の組織を呈する。また、曹長石、緑簾石の細粒多結晶集合体が確認され、角閃石のポーフィロクラストを伴う。マイロナイトの鉱物組合せは、アクチノ閃石+ツェルマク閃石+緑泥石+緑レン石+曹長石+チタン磁鉄鉱である。大部分がアクチノ閃石だが、一部Al2O3を10.40wt%含むAlに富むツェルマク閃石が確認できることから、高温でできた可能性を示唆する。カタクラサイトは、1m未満の大きさのブロックとして産し、面構造が発達する岩片の集合体であり。鉱物組合せは、アクチノ閃石+ウィンチ閃石―バロア閃石+緑泥石+緑レン石+曹長石+チタン磁鉄鉱である。変成ハンレイ岩は緑泥石の反応帯を伴う。鉱物組合せは、バロア閃石+マグネシオリーベック閃石+緑泥石+緑レン石+白雲母+曹長石+チタン磁鉄鉱である。角閃石は、多くがバロア閃石の組成を示すが、稀にマグネシオリーベック閃石を伴う。曹長岩は、拳ほどの大きさで産する。この地域の蛇紋岩メランジュは、オンファス輝石が産することや、バロア閃石―ウィンチ閃石、マグネシオリーベック閃石も見られることから緑レン石―藍閃石片岩相程度の変成作用を受けたと考えられる。
また、蛇紋岩メランジュのブロックとして方解石と赤鉄鉱に富む特異な岩石が産する。鉱物組合せは、主に単斜輝石+緑レン石+雲母+角閃石+クロム鉄鉱+曹長石+緑泥石+方解石+赤鉄鉱であり、クロム鉄鉱の割れ目、または取り囲むように単斜輝石、緑レン石、雲母、角閃石が配置する構造を示し、曹長石、方解石を除く全ての鉱物にCrが含まれる。特に、クロマイトの周囲に発達する単斜輝石、緑レン石、雲母、角閃石に多くCrが含まれる。単斜輝石では、最大6.82wt%のCr2O3を含み、核部から縁部にかけて組成累帯構造は見られない。よって拡散律速型の反応によって形成されたものではない。
また、蛇紋岩メランジュのブロックとして方解石と赤鉄鉱に富む特異な岩石が産する。鉱物組合せは、主に単斜輝石+緑レン石+雲母+角閃石+クロム鉄鉱+曹長石+緑泥石+方解石+赤鉄鉱であり、クロム鉄鉱の割れ目、または取り囲むように単斜輝石、緑レン石、雲母、角閃石が配置する構造を示し、曹長石、方解石を除く全ての鉱物にCrが含まれる。特に、クロマイトの周囲に発達する単斜輝石、緑レン石、雲母、角閃石に多くCrが含まれる。単斜輝石では、最大6.82wt%のCr2O3を含み、核部から縁部にかけて組成累帯構造は見られない。よって拡散律速型の反応によって形成されたものではない。