JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP43] [JJ] 脆性延性境界と超臨界地殻流体:島弧地殻エネルギー

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 202 (国際会議場 2F)

コンビーナ:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)、小川 康雄(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、座長:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、座長:浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)

14:45 〜 15:00

[SMP43-05] 東北日本の古カルデラのマグマ溜まり深度・流体飽和度と地殻流体活動の関連

*宇野 正起1山田 亮一1ファジャール アマンダ1奥村 聡2 (1.東北大学大学院環境科学研究科、2.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:古カルデラ、地殻流体、メルト包有物、島弧マグマ

島弧マグマは地殻への水流体供給の主要なソースであり,そのマグマ溜まり深度や含水量の把握は,上部地殻のダイナミクスを理解する上で重要である.特に2011年の東北沖大地震以降,多くの群発地震が古カルデラ下で発生しており,流体活動が示唆されている(Okada et al., 2015).白沢・深野・川崎カルデラは,そのようなカルデラの一つであり,現在の火山フロントの約15 km東側に位置する古カルデラ群である.特に,白沢カルデラ下では地震波反射面や地震波低速度異常が観測され,現在でも地殻流体の供給が続いていると示唆される.このような古カルデラ下の物質科学的な実態を明らかにするために,古カルデラ堆積物中のメルト包有物の解析を行い,マグマ溜まりの深度分布・メルトの流体飽和度を明らかにし,地球物理観測との比較を行った.
これらカルデラの石英中のメルト包有物は,低アルカリ流紋岩に分類され,その主要・微量元素組成は斜長石±石英の分化トレンドで説明できる.斜長石ー石英間の共有点組成の圧力依存性からメルトの捕獲深度を推定すると,白沢カルデラは30–300 MPaに集中し,主要なマグマ溜まりは深さ1–11 kmにあったと推測される.また,メルト包有物の含水量は2.8–5.5 wt%, CO2含有量は38 ppm以下である.捕獲圧力ー含水量関係は流紋岩質メルトの飽和含水量曲線に一致し,少なくとも深度1–6 kmではメルトはH2Oに飽和していたことが明らかになった.
白沢カルデラの南西に位置する深野・川崎カルデラのメルト捕獲深度も約30–300MPaに集中し,同カルデラのマグマ溜まり深度も1–11 kmであったと推測される.
これらのマグマ溜まり深度分布(1–11 km)・流体飽和深度(1–6 km)は,白沢カルデラ直下の反射法地震探査の顕著な反射面(2–5 km; Sato et al., 2002),地震波トモグラフィーの低Vp, Vs・高ポアソン比の領域(5–10 km)に対応しており,トーナライト質のマグマ溜まりの残渣あるいは集積岩が流体貯留層となっていると考えられる.また,マグマ溜まりの最深部(白沢カルデラ〜11 km, 深野カルデラ〜11 km)はそれぞれ群発地震の深度(白沢カルデラ8–12 km; 深野カルデラ7–12 km)と一致し,マグマ溜まり残渣の底へ現在でも流体供給があると推測される.