JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP44] [JJ] 鉱物の物理化学

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、鎌田 誠司(東北大学学際科学フロンティア研究所)、座長:大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

14:00 〜 14:15

[SMP44-08] AlPO4モガナイト相における相転移:高温その場ラマン分光法による研究

*神崎 正美1 (1.岡山大学惑星物質研究所)

キーワード:モガナイト型AlPO4、ソフトモード、ラマン分光法

Moganite構造のAlPO4が高圧相の1つとして発見された(Kanzaki and Xue, 2012)。MoganiteはSiO2のレアな多形の1つであり、その構造は石英(の双晶)と密接な関係がある。SiO2やAlPO4の多形と同様に、温度による変位型相転移が予想される。SiO2-moganiteについては既に相転移が報告されている(Heaney et al., 2007)。SiO2-moganiteは単相を得ることが困難なためにラマンおよび回折実験で良質のデータを得ることが難しい。AlPO4-moganiteは単相として合成できる利点があるが、常圧では準安定である(この点はSiO2-moganiteも同じであるが)。本研究ではAlPO4-moganiteにおける相転移の存在を確かめるために、高温その場ラマン測定を800 oCまで常圧で行った。なお、2011年の同セッションの講演でこの相転移に簡単に触れているが、今回は測定をやり直し、低周波数におけるソフトモードの存在についても調べた。
 使ったAlPO4-moganite相は以前に5 GPa, 1500 oCで合成したものである(Kanzaki and Xue, 2012)。加熱にはワイヤーヒーターを使った(Kanzaki et al., 2012)。温度校正には5〜6種類の融点既知の物質を使った。ラマン測定には自家製の共焦点顕微ラマン分光法システムを使った(488 nmレーザー, ~80 mW, f=500 mmポリクロメーター、液体窒素冷却CCD検出器)。最初は100 cm-1以上の周波数領域での測定を行ったが、その後、低周波数領域の測定ができるようになり、室温において2つのラマンピーク(約60と73 cm-1)を新たに見つけた(2016年同セッション講演参照)。これらのピークがソフトモードかどうかを調べるために100 cm-1以下領域の高温測定を追加で実施した。アンチストークス側も同時に測定することで、ラマンピークを装置起因ノイズと区別した。室温から25 oCステップで800 oCまでの昇温過程で測定した。
 100 cm-1以上の周波数領域で測定したラマンスペクトルを解析したところ、いくつかのピークが温度とともにわずかに低周波数側にシフトすることが観察され、425 oC付近でシフト方向が反転するか、ほぼ一定になった。しかし不連続は見つからなかった。これらのハードモードの結果から、高次の相転移の存在が明らかとなり、転移点は約425 oCと推定された。一方、100 cm-1以下における測定では、73 cm-1ピークは温度とともに大きく低周波数側へシフトし、同時にピーク幅が急激に増加することが観察された。約475 oCではピークは消失した。これらの結果から73 cm-1ピークはソフトモードと考えられる。一方、60 cm-1のピークは、温度により少し低周波数にシフトし、73 cm-1ピークと一時オーバーラップするが、73 cm-1ピーク消失後も残り、温度によるシフトはほぼ一定になった。こちらは上記ハードモードの振る舞いとよく似ている。800 oC付近では常圧安定相であるberlinite(石英相)の出現が観察された。
 本研究でAlPO4-moganite相においても高次の相転移が存在することが確認された。また、ソフトモードを観察することができた。SiO2-moganiteについてはハードモードの測定結果があり、転移点は~570 Kとされている(Heaney et al., 2007)。低周波数領域が測定されていないこともあり、ソフトモードは観察されていないが、AlPO4同様にソフトモードが存在する可能性がある。なお、ハードモードとソフトモードで転移温度が異なるが(425 oC vs 475 oC)、これは後者の測定時間間隔が短かったため、測定上の問題(熱的非平衡)である可能性が高い。今回の実験はberliniteが生じたために加熱過程のみであったが、冷却過程での測定を含め研究を続ける予定である。
Heaney, P.J. et al. (2007) Am. Mineral., 92, 631
Kanzaki, M. and Xue, X. (2012) Inorg. Chem., 51, 6164
Kanzaki, M. et al. (2012) J. Min. Petrol. Sci., 107, 114