14:30 〜 14:45
[SMP44-10] Artinite, Mg2CO3(OH)2・3H2O のH2O/CO3の秩序配列の再検討
キーワード:Artinite 、無秩序配列、単結晶構造解析、第一原理計算
【はじめに】
炭酸マグネシウム水和物には,多様な相が存在する (Hopkinson et al. 2012).その中で,artiniteは結晶構造中でH2O基とCO3基が無秩序配列する極めてユニークな構造を持つことが知られている (Akao and Iwai 1977).しかしながら,その特異性について十分な検討はなされていない.そこで,本研究ではartiniteの結晶構造中でH2O基とCO3基が無秩序配列しているのか,秩序配列しているのかを解明するという目的のもとに実験を行った.
【実験方法】
実験には,天然のartinite (San Benito, USA) を用い,高輝度単結晶自動X線回折装置 (Bruker APEXII ULTRA) により測定を行った.単結晶構造解析は,固有位相決定法により原子位置を決定し,最小二乗プログラムShelxl-97 (Sheldrick 1997) により原子位置の精密化を行った.また,結晶構造解析は,無秩序配列モデルと秩序配列モデルについてそれぞれ行った.第一原理計算は,汎用量子化学計算プログラムGaussian 09 (Frisch et al. 2009) を用いた.波動関数には密度汎関数 (DFT),基底関数には6-31Gを用いて有効電荷解析を行った.
【結果】
Artiniteは,単斜晶系,空間群C2/m,格子定数は,a=16.468(8) Å,b=3.1352(15) Å,c=6.184(5) Å,β=98.702(5) °であった.CO3/H2Oの無秩序配置モデルで結晶構造を精密化した結果,R1=0.0339,wR2=0.0937,GooF=1.013であった.一方で,CO3/H2Oを秩序配置モデルで結晶構造を精密化した結果,構造精密化をすることができなかった.第一原理計算により,無秩序配列モデルの電荷分布を計算した結果,CO3基同士が隣り合うO原子の電荷が-0.378,隣り合わないO原子の電荷が-0.721,MgO6八面体に配位しているO原子の電荷が-0.845,C原子の電荷が1.296となった.
【考察】
Akao and Iwai (1977)では,artiniteの結晶構造中でH2O/CO3は無秩序配列していると結論付けている.本研究の結果は,彼らの結果を支持するものとなった.Mgの配位多面体の結合距離(Å)は,2.0345(9) (×2),2.0610(13),2.1641(9) (×2),2.0135(13),Cの結合距離(Å)は,1.227(3),1.2920(18) (×2)であり,この結合距離は,Akao and Iwai (1977)の結果と類似している.一方,配位多面体の歪みを他のマグネシウム炭酸塩と比較すると,Nesquehonite MgCO3・3H2O と Hydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O と同様にMagnesite MgCO3の配位多面体に比べ歪んでいることがわかる.また,第一原理計算の結果は,CO3基同士の隣り合うO原子の有効電荷が隣り合わないO原子の有効電荷より小さくなっており,O原子同士の反発が抑制されていることを示唆する.このことは,無秩序配列している場合にCO3基同士が隣り合えることを示している.
炭酸マグネシウム水和物には,多様な相が存在する (Hopkinson et al. 2012).その中で,artiniteは結晶構造中でH2O基とCO3基が無秩序配列する極めてユニークな構造を持つことが知られている (Akao and Iwai 1977).しかしながら,その特異性について十分な検討はなされていない.そこで,本研究ではartiniteの結晶構造中でH2O基とCO3基が無秩序配列しているのか,秩序配列しているのかを解明するという目的のもとに実験を行った.
【実験方法】
実験には,天然のartinite (San Benito, USA) を用い,高輝度単結晶自動X線回折装置 (Bruker APEXII ULTRA) により測定を行った.単結晶構造解析は,固有位相決定法により原子位置を決定し,最小二乗プログラムShelxl-97 (Sheldrick 1997) により原子位置の精密化を行った.また,結晶構造解析は,無秩序配列モデルと秩序配列モデルについてそれぞれ行った.第一原理計算は,汎用量子化学計算プログラムGaussian 09 (Frisch et al. 2009) を用いた.波動関数には密度汎関数 (DFT),基底関数には6-31Gを用いて有効電荷解析を行った.
【結果】
Artiniteは,単斜晶系,空間群C2/m,格子定数は,a=16.468(8) Å,b=3.1352(15) Å,c=6.184(5) Å,β=98.702(5) °であった.CO3/H2Oの無秩序配置モデルで結晶構造を精密化した結果,R1=0.0339,wR2=0.0937,GooF=1.013であった.一方で,CO3/H2Oを秩序配置モデルで結晶構造を精密化した結果,構造精密化をすることができなかった.第一原理計算により,無秩序配列モデルの電荷分布を計算した結果,CO3基同士が隣り合うO原子の電荷が-0.378,隣り合わないO原子の電荷が-0.721,MgO6八面体に配位しているO原子の電荷が-0.845,C原子の電荷が1.296となった.
【考察】
Akao and Iwai (1977)では,artiniteの結晶構造中でH2O/CO3は無秩序配列していると結論付けている.本研究の結果は,彼らの結果を支持するものとなった.Mgの配位多面体の結合距離(Å)は,2.0345(9) (×2),2.0610(13),2.1641(9) (×2),2.0135(13),Cの結合距離(Å)は,1.227(3),1.2920(18) (×2)であり,この結合距離は,Akao and Iwai (1977)の結果と類似している.一方,配位多面体の歪みを他のマグネシウム炭酸塩と比較すると,Nesquehonite MgCO3・3H2O と Hydromagnesite Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O と同様にMagnesite MgCO3の配位多面体に比べ歪んでいることがわかる.また,第一原理計算の結果は,CO3基同士の隣り合うO原子の有効電荷が隣り合わないO原子の有効電荷より小さくなっており,O原子同士の反発が抑制されていることを示唆する.このことは,無秩序配列している場合にCO3基同士が隣り合えることを示している.