JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP44] [JJ] 鉱物の物理化学

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、鎌田 誠司(東北大学学際科学フロンティア研究所)

[SMP44-P05] 落下法熱量測定と溶解熱測定の組み合わせによるAnorthiteとDiopsideの融解熱の決定

*菅原 透1大平 俊明1 (1.秋田大学大学院理工学研究科)

キーワード:シリケイトメルト、融解熱、溶解熱、熱量測定

DiopsideとAnorthiteの融解熱はマグマのエンタルピーの大きさを定める重要な熱力学量であり,火成作用の熱力学的考察や相平衡計算をする上ではそれらの精密な値が必要とされる. これまでに,Diopsideの融解熱は多くの研究があるが,Anorthiteについては報告が少ない.本研究では双子伝導型熱量計を製作し,DiopsideとAnorthiteについて落下熱量測定と室温での溶解熱測定を行い,それぞれの融解熱を決定した.
 はじめに,氷熱量計を用いた落下法熱量測定により1773-1873Kとメルトと273Kのガラスのエンタルピーの差を測定した.次に,回収した急冷ガラスならびにAnorthiteとDiopsideの合成結晶のフッ化水素酸溶液に対する溶解熱を測定した.本研究で用いた双子伝導型熱量計の検出器は銅製の均熱ブロック上に対称的に配置されたテフロン製の測定容器および参照容器から成り,二重の恒温水槽により囲まれている.それぞれの容器に23wt%のフッ化水素酸水溶液を100ml入れ,温度の安定後に測定容器の溶液中に40-60mgの粉末試料の投入し,温度変化をサーミスタで測定した.試料の測定と校正ヒーターによる測定を繰り返して溶解熱を求めた.Anorthiteについては1100°Cで72時間アニールしたガラスについても測定した.
 ガラスと結晶の溶解熱の差から,298Kのガラス化のエンタルピーはDiopsideについて87.3±7.0 kJ/molおよびAnorthiteの急冷ガラスについて83.4±6.5kJ/molと求まった.また,アニールしたanorthiteガラスについては78.0±8.5kJ/molであった.これらの値を落下熱量測定の結果,結晶の熱容量の文献値と組み合わせて,融点における融解熱を求めた.Diopsideの融解熱は融点1665Kにおいて138.7±7.0kJ/molであった.Anorthiteの融点(1830K)での融解熱は,溶解熱について急冷ガラスの値を用いたときは145.0±6.5kJ/mol,アニールガラスの値を用いたときは146.1±7.5kJ/molであり,両者はほぼ一致した.Diopsideの融解熱は既報の4文献での報告値(137-139kJ/mol)と矛盾しない.一方で,Anorthiteの融解熱はRichet et al. (1984)による値(137.0±7.0kJ/mol)よりも10%ほど大きな値であった.これは,Richet et al. (1984)が見積もった溶解熱測定に用いられたガラスのガラス転移温度に大きな誤差があったことに由来していると考えられる.