JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD39] [JJ] 資源地質学

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、高橋 亮平(秋田大学大学院国際資源学研究科)

[SRD39-P01] インドネシア、パプア州、グラスベルグ鉱山、DMLZ鉱床における、銅-金鉱化作用に伴われる鉱物組み合わせに関する先行研究

*中尾 彰汰1米津 幸太郎1ティンデル トーマス1ロサナ メガ2ベンサマン ベニー3 (1.九州大学、2.パジャジャラン大学、3.PTフリーポートインドネシア)

キーワード:スカルン、鉱物組み合わせの分布、銅-金鉱化作用

グラスベルグ鉱山は世界でも最大規模の銅-金鉱山の一つとして知られている(Cu: 341,099t, Au: 35t, 2015)。鉱山の歴史は1936年にオランダの地質学者により発見されたことに始まり、1972年からのPT Freeport Indonesiaによる大規模採掘へとつながった。現在操業中の鉱床は全部で3つあり、グラスベルグ露天掘り鉱床、Deep Ore Zone (DOZ)坑内掘り鉱床、そしてDeep Mill Level Zone(DMLZ)坑内掘り鉱床である。鉱床のタイプとして、グラスベルグ露天掘り鉱床は斑岩銅鉱床、残り二つの坑内掘り鉱床はスカルン鉱床となっている。グラスベルグ露天掘り鉱床は、現在のグラスベルグ鉱山全体の生産量の70%を占める鉱床であるが、高品位の坑内掘り鉱床を開発するという計画に沿って、1990年から始まった操業を2017年末期に終了し、グラスベルグ鉱山内すべての鉱床が坑内掘り鉱床へとなる予定である。一方、DMLZ鉱床は2015年に操業を開始した最も新しい鉱床であり、かつ2021年までに鉱石生産量を8万t/日を見込まれている鉱床であるが、DMLZ鉱床は操業を開始して間もないため学術的調査もあまり進んでいない。そこで、本研究ではDMLZ鉱床におけるスカルン鉱物組み合わせと鉱石鉱物の分布について理解し、金属鉱化作用とスカルン作用の関連について明らかとすることを目的とした。
DMLZ鉱床での金属の鉱化作用は、白亜紀から第三紀のKembelangan GroupやNew Guinea Limestone Groupの石灰岩や砂岩に、鮮新世に貫入した貫入岩である閃緑岩が、密接に関連している。貫入岩の閃緑岩から離れるにつれて、岩相がホルンフェルス帯、スカルン帯、そして結晶質石灰岩へと変わり、それらすべての岩相を貫くコア試料(TE-17-09)を中心に、鉱物組み合わせの分布を明らかにするために均一間隔でサンプルを採取した。なお、本研究では、特にエクソスカルン変質地帯(コア試料の坑口から約320m~480m地点)に着目し実験を行った。研究手法としては現地調査による肉眼観察に加え、研磨片・薄片の作製、SEM-EDXによる鉱物同定、XRFによる化学分析を行った。
スカルン鉱床には高温の前行過程と低温の後退過程という二つの異なる変質の過程が存在しており、前行過程においてザクロ石などの無水鉱物が形成され、後退過程において緑簾石などの含水鉱物や硫化鉱物が形成されることが分かっている。顕微鏡観察より、前行過程における主な鉱物としてザクロ石、後退過程における主な鉱物として緑簾石、黄銅鉱、黄鉄鉱が確認された。また、主な鉱石鉱物は黄銅鉱と黄鉄鉱、脈石鉱物は緑簾石であったことから、DMLZ鉱床のエクソスカルン変質地帯では後退過程において形成された鉱物が卓越していると言える。顕微鏡観察により観察された自然金はすべて黄銅鉱に付随していたことから、DMLZ鉱床における金の鉱化作用も後退過程において起こっていると考えられる。また、高温の前行過程に形成される主な鉱物であるザクロ石がコア試料の坑口から約360m地点の試料を境に観察できなくなったことと、母岩中の方解石が対照的にその地点付近より遠い地点において卓越してきたことから、貫入岩からもたらされた熱水はその地点までに前行過程の鉱物ができない温度にまで冷却されたと考えられる。
結論として、前行過程に形成されるザクロ石は貫入岩近傍(コア試料の坑口から約360m地点まで)の試料でのみ観察された一方で、後退過程に形成される緑簾石や、黄銅鉱と黄鉄鉱が広範囲にわたり発達していたことから、DMLZ鉱床のエクソスカルン変質地帯における主なスカルン鉱物と鉱石鉱物は後退過程において形成されており、自然金もすべて黄銅鉱に付随していたことから、金の鉱化作用も同様に、後退過程に発達していることが解明された。